あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

コケを食べる蛾 赤いスジベニコケガ

恒例のあいかわ公園の壁に集まる虫を紹介する記事です。
今日は輝かしい来訪が見られました。色合いが存在感を放っています。
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おそらくスジベニコケガというヒトリガの仲間だと思われます。
名前の通りよく見ると紅色の筋が体中のいたるところに入っていますね。見るからに警告色(蜂などが持つ色合いで、毒を持つことを教える)のように見えますが無毒の蛾です。面白いのが幼虫は苔類を食べて育つそうです。故にコケガと呼ばれています。一般種なのでマンション住みの方などは壁で見かけることがあるかもしれませんね!

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アオシャクの仲間もやってきていました。シャクガには色々な種類がいるため素人には判断ができません。少し調べたのですが結局詳細な種類までは分かりませんでした。この仲間たちは毒がないので安心ですね。いかにも身近にいる蛾という雰囲気ですが、シャクトリムシの多くがこのような形の蛾になります。
青いボディに入る白い線が可愛いですね。この線の形で種類が分かったりするそうですよ。

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壁ではありませんが大物に遭遇しました。4~5cm程はあったと思います。いかにも毛虫らしい毛虫で危なさそうな雰囲気をしていますね。色も明らかな警告色を出しています。先日触れたオビカレハにどことなく似ているなと思っていたのでその辺の種類を探ってみるとどうやらタケカレハのようです。カレハガの仲間は以前お伝えしたようにほとんどが毒針毛(どくしんもう)をもつ種類ですのでこのタケカレハも毒を持つ種類になります。むやみに触らない危機回避能力がここに生きてきましたね!
蛾の仲間は特定の植草を好むので、竹の有る場所に行くときやその付近ではこの黄色い蛾に注意が必要です。


あいかわ公園 山野草図鑑
山野草図鑑 白色にユズ ナツミカンを追加しました。

紫色のフードをかぶった可愛らしい花 波に例えられるタツナミソウの仲間

今の季節には実に面白い形をした花を見ることができます。皆様の身の回りにも生えているかもしれません。
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それがこのタツナミソウです。かっこいい名前から一度聴いたら印象に残ること間違いなしの花です。シソ科の花はこれまでにも数多く紹介してきましたが、このタツナミソウの形が私は一番好きですね。根元のすらっとした細さとエイリアンのような花の正面の形、それでいて色合いは紫からなるグラデーションのように白から紫まで楽しめます。
この花は、まるで花の形が押し寄せる波のように見えることから名付けられていますがどうでしょうか?単体の写真ではいまいち伝わりませんか?
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この場所にはたくさん生えているのでまとめて撮ってみました。日の当たる同じ方向を向いており、ザザーンと押し寄せる波のように見えてきませんか?難しい方は葛飾北斎が描いたあの有名な波の絵をイメージしてみると波っぽく見えるかもしれません。迫力は全く勝てませんが(笑)

遠くから見てもその色合いから目立つ花なのですが近くで見るとやはり面白い形の花ですね。
実はこのタツナミソウの仲間は似た種類が非常に多い種類です。特徴からオカタツナミソウではないかと推定しています。どのようなポイントを見たかというとまずは花の付き方です。
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花が植物体の上の方でまとまっていますね。このように花の付き方が一カ所にまとまって咲くのがオカタツナミソウで、普通のタツナミソウはエレベーターの各階層のようにだんだん上に花が付いていくような付き方をしています。あとは色も1つの判断ポイントですね。全体的に濃いめの紫がベースになっています。タツナミソウは赤紫に近い色の物が多いので1つの判断ポイントにしてもいいかもしれません。
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そして難しいのが毛の向きです。そんなところまで気にする人いるの!?と思われるかもしれませんが、結構違うものなのです。オカタツナミソウは下向きの毛が生えます。花の付き方と葉の形、毛の向きが分かればおおよその種類を絞り込めます。
この種は、花の高さが同じ位置に付き、花色が濃い紫で、下向きの毛が生えているというポイントからオカタツナミソウと考えました。

オカタツナミソウを紹介するとともに植物を絞り込む視点を紹介してみました。このように植物を見ていくと世界が一気に広がるのでとても面白いですよ。マイナーと言えばマイナーな世界ですが、知るべきことが多くて入り込めば一生勉強できる世界だと思います。おススメです。

常緑樹の不思議

植物は秋になると葉を紅葉させて落とすというイメージを持っていませんか?
もちろんそのようにふるまう植物も多いです。ところが冬になっても葉をつけたままの植物を見かける機会もありますよね。彼らは葉を変えたりしないのでしょうか?そこで今日は常緑樹をみてみましょう。
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広場に生えているクスノキを紹介します。以前の自然観察ガイドイベントでは葉をちぎって香りを嗅いでもらうことで人気だったクスノキですね。スパイスのシナモンとお友達なのです。
実は既に写真で変化がみられるのですが気づきましたか?まだの方は色に注目してみましょう。


そうです。濃い緑色と淡い緑色の2種類が見られますね。これこそまさに新葉を広げた後なのです。濃い緑は去年の葉ですね。
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比較してみると新葉はいかにも柔らかそうです。あとは広げたばかりなのでまだ小さいですね。常緑樹は落葉樹(秋に葉を落とす)と違い、一気に葉を落とすことはしません。ですが古い葉を持ち続けることもしないのです。密かに新葉を広げることは分かりましたね。では古い葉はいったいどうするのでしょうか?
クスノキ全体を見てみると2色の緑以外にも色があることに気づきます。
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このように赤や黄色とまさに紅葉のような色合いをしているではないですか!
枯れてしまった葉でしょうか?

常緑樹はこのように古い葉を少しずつ落としていくんですね。それは一気に葉を落としてしまうと光合成ができず栄養を取れなくなってしまうかもしれないからです。このようなポイントに注目してみないといつも同じ葉をつけている植物のように見えてしまいますね!

ちなみにですがクスノキの古い葉には小さな凸凹があったりします。これはダニ室といって葉っぱの中にダニが住み着いているのです。3枚目は分かりやすいですね。
一枚の葉からたくさんの情報が得られました。ぜひ自然の中ではたくさんの疑問を持って接してみてくださいね。


あいかわ公園 山野草図鑑
5/17あいかわ公園山野草図鑑 白色の花にハリエンジュ、サルナシ 黄色の花にブタナを追加しました。
サルナシの花は見る機会が少ないと思います。

ヒトリシズカとフタリシズカ 名前はそっくりでもその姿は?

4月の記事で、林床にひっそりと咲く美しい花 ヒトリシズカを紹介しました。もう時がたっているため覚えていない方も多いかもしれません。そんな時は記事についているカテゴリーをクリックすると(スマホの場合記事名の下にあります)過去のテーマをまとめて見られますよ。こんなお花でした。
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草丈15cm程度で知らなければ恐らく見つけられないであろう花でしたね。花の茎を密かに1本出す様子が一人で静かに咲いているように見えるのです。

では友達が増えるとどうなるでしょうか?季節が外れてお友達はやってきます。
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そのお友達の名はフタリシズカです。恐らくヒトリシズカよりも有名かもしれませんね。フタリシズカは非常に大きく群生することも多いため見つけやすいのです。草丈は50~60cm位あります。これなら遠くからでも見つけられそうではないですか?

葉に注目してみると4枚の葉がほぼ同じ高さで4方向に出ているのが分かります。
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フタリシズカの場合高さが若干異なっており、よく見ていると2対の葉が漢字の十の字のように交互に重なって付きます。つまり対生(たいせい)という付き方ですね。また、白い部分が花の役割を持っているのですが花びらなどは持たず直接雄しべが付いています。やはり変わった面白い植物ですね。
フタリシズカの場合花をつける茎の数は2本とは限りません。写真のように4本の物もあれば3本の物もあります。ヒトリシズカと違ってずいぶん個性あふれた子が多いですね。山の薄暗いような所で、かつ日差しが少しは入る場所で見かけるので機会があれば探してみてくださいね。



あいかわ公園 山野草図鑑
5/17あいかわ公園山野草図鑑 白色の花にハリエンジュ、サルナシ 黄色の花にブタナを追加しました。
サルナシの花は見る機会が少ないと思います。

雲の如く咲く花 ハクウンボクは園内屈指の美しさ

あいかわ公園で今の季節にひそかに楽しみにしているものがハクウンボクと呼ばれる植物です。
皆様もぜひ名前から植物の姿を想像してみてください。ハクウンの名はどんな様を表しているのでしょうか?
それがこちら
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下から見上げてみると空を覆いつくす雲の如く咲き乱れていますね。花がかなり密に咲くことでまさに白雲のように見えるのです!
実物を見ると純白と言えるような真っ白さのお花に黄色の雄しべの色合いがとても綺麗です。そしてそれがいくつも連なっているため圧巻の様子です。
ハクウンボクの名前を付けた方はセンスがいいですね!

ハクウンボクは意外と身近にはないかもしれませんがこの木と同じ仲間のエゴノキは町中でも比較的見つけることができます。
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ハクウンボク程連なりはしませんが、似た形の花を結構な数つけるので清楚な印象を受けます。
2種の花を見てください。よく見ると下向きにしか花が咲いていません。以前ベニバナアセビなどの記事で下向きの花は虫たちに花粉を運んでもらうという話をしました。彼らはつぼ型の花でしたが、今回は違います。エゴノキたちは下向きに花を咲かせることで花に止まれる脚力を持った昆虫に花粉を運んでもらうのです。クマバチなどは分かりやすいですね。

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エゴノキ科の仲間には今の季節にはエゴツルクビオトシブミがやってきます。運よく写真が取れました。もしエゴノキの葉にくるくるした葉を見つけたらこの子の仕業ですのでそっとしておいてあげましょうね。


あいかわ公園 山野草図鑑
あいかわ公園山野草図鑑 白色の花にハリエンジュ、サルナシ 黄色の花にブタナを追加しました。
サルナシの花は見る機会が少ないと思います。

赤い野イチゴの仲間 クサイチゴの味とは?

春に白い美しい花をつけそれから1月ほどたつとそこにはおいしそうなイチゴが実ります。どこかで一度くらいは見たことがあるのではないでしょうか?
こんな実です。
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こちらはクサイチゴというバラ科の植物の実で、食べることができます。見た目もおいしそうですよね。
このクサイチゴはおいしいだろうと推測できます。なぜだと思いますか?


日当たりがよく栄養をたっぷり蓄えているからです。あくまで経験則なので一概には言えません(笑)
当たりにはしっかりと甘みがありおいしいのですが、外れるとひどいのです。その辺の草をかじったような青臭さがあります。野イチゴはジャムなどにすると見た目よし味よしの物が作れますよ。

野で見つけると最もうれしいのがこのイチゴです。
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個人的には酸味のあるラズベリーなどの流通しているベリーよりもこのモミジイチゴの方が圧倒的においしいと感じます。もちろん当たりはずれはあるのですが、基本的には甘みが強くほんのり酸味があり、少し大きい果肉がプチプチと弾ける食感が楽しめます。多くの場合結構大きめの果実をつけるため、1口でもうれしさが味わえます。小さい蟻がくっついている可能性が高いので注意しましょう。ちなみにアリはギ酸を持つので酸味があるとされています。

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探すときはこのように色のくすんでいるものは避けます。たいていおいしくないです。前の写真のように透き通った色合いのものにしましょう。
野イチゴの仲間は種類がいくつかありますが、もし探す場合は実だけを見るのではなく、しっかりと葉の形なども調べてから採取することをお勧めします。
興味のある方はこれからの季節にクワ や ヤマモモが旬を迎えるのでそれも調べてみてくださいね!





あいかわ公園 山野草図鑑
5/13日   あいかわ公園山野草図鑑 白色の花にエゴノキ、ハクウンボク、ドクダミ、ヒトリシズカ、フタリシズカ その他色にコバンソウ、赤色にヒメスイバを追加しました。 公園で見られる植物を色ごとに紹介しています。現在はパソコンだとカテゴリー分けが分かりやすいです。

毛虫には毒がある?オレンジ色と水色の毛虫オビカレハ

10人中10人が毒と答える毛虫オビカレハ

毎年5月頃になるとあいかわ公園の桜の木には綺麗な色合いの毛虫が現れます。

明らかに長くて刺さりそうな毛と、どう見てもを持っているアピールをしているオレンジで目立つ色合いのため、皆様が触れたくない100点満点の毛虫といえるかもしれません。

そもそも毛虫はなぜこのように毛をつけているのでしょうか?


例えば皆様の髪の毛に蜘蛛の糸が付いた時にはきっと糸が付いたことに気づけることが多いでしょう。

毛虫の毛も似たように振動を感知しています。相手はもちろん敵であるハチなどの昆虫の羽音です。



体を見ていきましょう。

よく見てみると頭とお尻にそれぞれ黒い斑点があります。

オレンジ色の体に頭とお尻の黒い点が見分けるときの分かりやすいポイントです。

この特徴からオビカレハだと分かります。
オビカレハはサクラが好きな幼虫であり、小さい時には集団で過ごす性質があります。木に糸で作られたネットがあればほぼ確実にオビカレハと言えるでしょう。

カレハガの仲間は毒を持つ種類の1種で、先日のドクガ科やヒトリガの仲間と並んで注意すべき蛾の種類ではあります。

ですがその仲間の全てが毒を持つわけではなく、オビカレハには毒はないとされています。となればここはひとつ手乗りタイムと行きましょう!

オビカレハは見た目も分かりやすい毛虫入門におすすめの種類


手にのせました。やはり大きめの幼虫にしがみつかまれる感覚というのは独特なものがあります。吸盤で少し張り付いているような感覚ですね。

毎度ながらこの手の毛虫に初めて触るときはとても緊張します。
似た仲間がおらず、特徴も派手と言うことからほぼ大丈夫と言う確信があるのですが、やはりわずかな不安が残りますね。

触れてみると毛が柔らかく長いのでとてもふさふさしており、歩くだけで少しくすぐったい感覚になります。おすすめです。


オビカレハは本当にとても綺麗な色合いをしていますね。 毛虫には何種類か触れてきましたが、毒がありそうで実はなくて驚いたのはオビカレハ、マイマイガ、リンゴドクガ辺りですね。

↑ドクガ科で毒の無い驚きの毛虫。左マイマイガ、右リンゴドクガ

やっぱり手にのせていると愛着がわきます。

毛虫には確かに毒を持つ種類がいる ので確信なく触らない方がいいのは確かですが、実際に毒を持つ種類というのは少ないので必要以上に恐れる必要はないですよ。

毒のある種類を知っておけば自然観察をより楽しむ余裕が生まれます。肩に急に幼虫が現れても平気になりますよ!

毒のある毛虫や蛾はこちら
aikawa-park.hatenablog.com
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