あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

横幅のあるフユシャクの時期

11月終わりごろから見られ始めたフユシャクの仲間たちですが、1月ぐらいにかけては縦に長いタイプの種類がよく見られました。春手前頃になってくると、別の種類が現れ始めます。縦ではなく、横に広い種類がよく見られるようになるのです。
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蛾の中には姿が似ていても実は別の種類だったという場合があるので、はっきりとこれだと特定することはできませんが、フユシャクの図鑑を見て条件を照らし合わせてみることにします。

しかしながら縦長のタイプの物と比べるとひとえにフユシャクと言っても大きく違うことが分かりますね。
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(縦長で、マントを羽織ったような姿のクロオビフユシャク)
個性豊かなことが分かります。
同じ仲間であってもこんなに形が違うんだから生き物と言うのは不思議ですね。

この種類は実は同種と思われるものを去年も見つけており、いったい何と言う種類なのか図鑑とにらめっこしていたのです。
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こちらは昨年見つけた似たフユシャクです。しかし、改めて見比べてみると種類が違うように思えます。今回見つけたものとは一回り小さい印象を受けたので、シロフフユエダシャクではないかと予測します。一枚目と比べてみても線の太さが全然違いますよね。
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この線の濃さで思い当たるのはヒロバフユエダシャクと言う種類なのですが、web検索をかけてみると驚いたことに類似の種類が他に4種類ほどいることが分かりました。

蝶であれば似た種類のものがいてもはっきりと分かりやすい見分けるポイントがあるのですが、蛾に関してはこの一枚の写真でははっきりとした答えにたどり着くのは私では難しいようです。やはり、以前に郷土資料館の昆虫学芸員の方がおっしゃっていたように、♀と交尾器辺りまで確認しないと難しいのでしょうね。

種類の検討が付きそうであればまた報告しようと思います。

コウヤボウキの冬の姿

以前コウヤボウキと言うイソギンチャクのような植物を紹介しました。
aikawa-park.hatenablog.com
花を咲かせていた場合、その数か月後に種ができ始めます. これは植物の種類にもよりますが、コウヤボウキの場合は今くらいの時期がジャストのタネシーズンのようです。
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見事に美しいほうきが出来上がっていますね。綿は非常に柔らかく、それでいてほうきの広がり具合もとてもいいです。これを使えばパソコンのキーボード周りなどは掃除ができてしまいそうな位です。

皆様ご存じのタンポポの綿毛と比べても根元ががっちりしている分安定感があり、簡単には抜けません。
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根元から掴んで引っ張ってしまうとさすがに抜けてしまいました。 タンポポの綿毛と比べてみるといかがでしょうか? 

根元の部分が大分太いように感じませんか? その根元の部分が種です。やはりタンポポと比べると大きな分種も大きいのでしょうか。

コウヤボウキもタンポポと同じく風に乗って種を飛ばすタイプの植物です。
名前の由来となっている種ももちろん面白いのですが、このタネを支えている部分にも面白い特徴があります。
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どうでしょうか?一枚目の鱗のような部分を上から見てみた写真なのですが、まるでお花のような姿をしていますね。知らずに見てしまうと茶色っぽい花が咲いていたと勘違いしてしまうような可愛い部分を持つのです。

冬に花っぽいものが見られるだけでもうれしいものですね。
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種が突き刺さっていた場所には、凹んだような台座があります。ここに種がくっついているので、種の数自体はそんなにないようですね。 ほうきの写真で確認したように、一枚のタネが大きく広がっているので種自体はたくさんあるように見えますね。

低山や、少し山のような雰囲気がある場所であれば比較的見られる植物なので、ほうきの姿や花のような姿も見てみてください。

葉の表と裏で色が違う? 粉を吹いたように白い植物シロダモ

植物に興味が向くことと言うのはなかなかないと思います。と言うのも、どれも似た姿をしているように見えて違いが分からないんですよね。

しかし、植物の中には非常にわかりやすい違いを持つものがいます。なんと!葉の表と裏で色が違う者たちがいるのです。 そんな分かりやすい違いを見比べれば、簡単に種類を絞ることができます。
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今回紹介するのはシロダモと言う白の字が名前に入った植物です。 名前に白が入っている植物はたびたび見られますが、何かしら理由があることも多いので、注意してみましょう。

さて、もう答えを言ってしまっているようなものなのですが、このシロダモには葉の裏に特徴があります。せっかくですから見てみましょう。
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緑色の表に対して葉の裏は白くなっていますね。粉を吹いたような色合いの白をしています。この特徴はあまり見られませんので、シロダモと言う植物を特定するのに非常に役立つ情報です。

シロダモはさらに嬉しいことにクスノキと言う香りがとても良い植物の仲間なので、ほんのりスパイシーな香りを楽しむことができます。
香りや葉の裏の色は植物同士で大分変ってくるポイントなので、自然に興味のある方はぜひ覚えておいてください。

更に見てみましょう。 実は葉と言うのは人間の血管と同じように脈が走っています。これに注目することで、より葉の違いを楽しめるのです。
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シロダモの場合、根元から大きく3つに分かれる脈を持つのが特徴です。 まるでフォークのような姿に見えますね。 こうして脈と言う新しいポイントに目を向けてみると、植物の細かい血管もはっきりと目を向けられるのではないでしょうか? 不思議な模様をしていてとても綺麗ですよね。

固い葉であればこの 葉の脈を標本として綺麗に残すこともできます。
お気に入りの葉と好きな模様を見つけたら挑戦してみるのも面白いかもしれませんね。せっかくなので私もサンプルを作ってみようかと思います。


aikawa-park-tutujizukan.hatenablog.jp
ツツジ図鑑の紫色に光源氏を追加しました。

緑色の花は珍しい? 冬にだけ現れる植物オニシバリ

1月の寒さから一転して昼間はかなり暖かい日が続いています。3月位のこれくらいの気候になると、条件次第ではヤマビルが活動を再開しそうで怖い所ですね。 
山にとあることを調査しがてら、変わった植物や自然の変化がないか探していました。すると秋に見かけていたオニシバリを発見しました。
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ある所には生えており、ない所には全然ない。そんな印象を受ける植物なのですが、山の中では登山道の上り始めの辺りでよく見かけますね。

プロペラのような多数ついた可愛い葉っぱも印象的ですが、冬と言えば彼らの可愛らしい花が見られる時期です!

実は写真にも花がすでに映っているのですが、気が付けましたか?
なかなか花らしくないので、もしかすると分からないかもしれませんね。

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こちらがオニシバリの花です。手裏剣のような素敵な形と、オレンジ色の綺麗なおしべの組み合わせはなかなか見かけることのない色合いですよね。

白や赤などの派手な色がイメージされがちな花を思い描いていると、なかなか花に気が付けないと思います。

オニシバリは実は園芸で人気のジンチョウゲの仲間で、園内であればミツマタが同じ種類の花になります。サクラやウメの花が似た者同士であるように、オニシバリとミツマタも同じ仲間なので似ています。
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つい最近ミツマタは紹介しましたね。 花の形を確認してみてください。そっくりですよね。ミツマタの花にも中心にはボタンのようなおしべが付いています。
葉や枝などの雰囲気は全然違っても大事な花はそっくりなんですね。
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オニシバリの茎を見てみるとこういった出っ張りがたくさんついています。大きな葉の下ではこんなにたくさんの蕾が付いていたんですね。

あいかわ公園の場合、1m以下の植物の場合シカに食べられてしまい姿を消すことがよくあります。しかしオニシバリやミツマタなどのジンチョウゲ科の植物の場合毒を持っているので、シカの食害を受けないんですね。 

とてもかわいらしい花なので、もし見つけることがあれば下から見上げてかわいい花を見てみてください。

春の気配を感じている植物達

2月は冷え込みが強くなる印象ですが、今年は暖かい日が多いですね。そんな気候を感じ取ってか、植物達も花を咲かせているものがいました。

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ジゴクノカマノフタことキランソウですね。この時期になると日当たりのいい場所で咲いていることがあります。

今年は霜の影響でか、去年花がたくさん咲いていたエリアが凸凹の残念なエリアに変わってしまったので、花が見れただけでもうれしいものです。

山の中に生える植物たちの珍しさも好きですが、個人的には身近に生えている植物たちの方が親近感がわいて好きです。
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毎度見事な地面への葉の巡らせ方です。本当にのりなどで貼り付けたかのようなくっつき具合ですね。この下には別名の通りに地獄が広がっているのでしょうか?(笑)  

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この時期のもう1つの楽しみと言えばヒメオドリコソウです。冬の寂しい自然の中に咲く色鮮やかなピンクは和みます。目に優しい色をしているんですよね。
ヒメオドリコソウの花も素敵なのですが、冬ならではの独特な色をした葉とともに映すのもなかなか好きです。淡いピンクの花と、葉の色、それに合わさる白い毛が可愛らしさを引き立ててくれます。

次も同じような形をした花ですが、より大型のホトケノザです。たびたび登場する花ですね。
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ヒメオドリコソウと比べると付け根の柄の部分が長く、立ち上がります。色もこちらは濃い紫色の物が多いですね。これから春前位にかけて辺り一面を埋め尽くすくらいに咲きます。 
今回紹介した植物は実はどれもシソ科の仲間でした。花の姿を見てみるとどれも似ているのが分かりますね。

皆様も身の回りに生えている植物に注目してみてください。思わぬところに花は咲いているものですよ。

タネツケバナの仲間の可愛い葉

園内の色々な場所でタネツケバナと言う可愛らしい名前の花が咲き始めています。恐らくこの記事をご覧の皆様の周りにも生えているかと思います。
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植物と言えば花が印象に残りがちなのですが、このタネツケバナの仲間(恐らくミチタネツケバナ)は葉も特徴的で可愛いのです。

種を面白い飛ばし方で飛ばすため、こういった植込みの端っこのわずかなスペースなどでも侵入することができます。
この植物は葉の色も大分個体差の大きい植物です。
f:id:aikawa_park:20210207134025j:plain特に冬の間は色の代わりが激しい印象を受けます。
一枚目のように緑色の物もあれば、少し赤色が入ったようなものもあります。今の季節は2枚目の写真のような色合いのものが多いですかね。

タネツケバナの仲間は開いた花のように全方位にかけて葉を広げます。これにももちろんいいことがあるのですが、いったいどんないいことがあると思いますか?植物の栄養を作るメカニズムを考えてみると分かりやすいかもしれません。


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こうして葉を目一杯広げることで、冬場の貴重な日差しを無駄なく浴びることができますね。可愛く見せるために葉を広げているわけではないんですよ。

このタネツケバナの仲間は最初に少し触れましたが面白い種の飛ばし方をします。種の姿を見てみましょう。
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白いものがお花で、ウインナーのようなものが種を含んだ実ですね。この実は乾燥してくると、一気に破裂するんです。

例えば人が乾燥しているときにこの実に触れるとパチン!っと弾けます。そしてそれを見越したかのように種にはべとつく物質が付いているので、人の足や今日の記事の最初の隙間のような所にも入り込むことがあるのです。 

このような種飛ばしの性質があるので、一つ植物を見つけると辺りにはいくつものタネツケバナが見つかることが多いです。
嬉しいことに葉でも簡単にわかる植物なので、ぜひ探してみてください。

フユザンショウとサンショウ 似た2種はトゲの位置が重要!

ふれあい広場のオオムラサキ保護区を見ていたのですが、中にサンショウのような植物が生えているのに気が付きました。

冬になって葉が落ちる時期になったもののその植物は葉を落とさずにいたため、改めてじっくり見るとフユザンショウだということが分かりました。
あまり見る機会のない植物だと思うので紹介していこうと思います。
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植物自体がまだまだ小さいので、いまいち違いが分かりにくいかもしれません。 

フユザンショウは冬に葉を落とさない特徴があります。今の季節にサンショウであれば葉を落としているため、区別するのは簡単です。トゲの雰囲気はお互いサンショウの名を持つ者同士なのでかなり似ていますが、ある点で分かりやすいです。まずは冬芽とともにトゲを見てみましょう。
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こちらはフユザンショウの冬芽です。非常にかわいらしい顔をした葉痕(水や栄養が通る管の跡)とその上にポツリと芽があります。なんだか左右に飛び出たトゲが手のように見えて可愛く見えてきますね。

一方サンショウの方も見てみます。
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フユザンショウと比べると顔の面積が小さいといった印象ですが、それ以外はやはり雰囲気も似ています。
決定的な違いはやはり冬葉であっても葉があるという点ともう1つ。
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実はフユザンショウにはサンショウには無かったトゲが見られます。葉の付け根の部分に一本鋭い針が出ているのです。これはサンショウにも見られません。なのでこの2点で見比べてみることをお勧めします。 あとは細かいものの葉の繋がっている部分がヘラのようになっていることも分かりやすいですね。

意外と見かける機会のない種類なので、比べるタイミングもないかもしれませんね。似た種類の植物は些細な点が違うことも多いので、こんな種類があるんだと思っていただけると嬉しいです。
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しかしまあ、フユザンショウの冬芽は可愛いですね~! このままぬいぐるみとかにできそうです。