あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

シソ科の花と公園のキランソウ

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上と下の2枚に分かれる
日差しが暖かくなり、日当たりのよい冒険の森の斜面ではぽつぽつと花が咲き始めました。

その中でも目立つのは、濃い紫色をしたキランソウです。面白い形の花ですが、シソ科の植物の中にはこのように上と下に分かれた花を持つものがいます。
花の名前が分からなくとも、この形からシソ科ということが分かるので、観察の際にはぜひ覚えておいてください。

この花をよく見てみると、上側に花粉が付いているのがよく見えると思います。この花は実はてこのようになっており、大きな下側の花びらに虫たちが乗るとその重みで花が傾き、上側の花粉が虫の背中につく という非常に頭のいい植物なのです。

別名として、ジゴクノカマノフタという物騒なものがありますが、地面にべたっと張り付く様から地下の地獄をふさいでいるように見立てたようです。面白いですね。

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同じような形のツクバキンモンソウ 名前が分からなくともシソ科と分かる
あいかわ公園でみられるシソ科の植物では、ヒメオドリコソウもよく見られます。
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形は少し違うが、上に花粉が付いているのが分かる
花の形で、植物の種類がある程度分かるといった視点を持っていただくと、自然観察の楽しみがグッと増えると思いますよ。シソ科以外の植物も記事にしていく予定ですのでお楽しみに!

シメジの仲間 センボンクヌギタケはまさにセンボン生えそうな勢い

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倒木にたくさん生えるキノコ
キノコに詳しいわけではないのですが、最近のあいかわ公園ではキノコをよく見かけます。気になるものがあったので調べてみました。

写真は、センボンクヌギタケと呼ばれるキノコだと思われます。倒木に千本 とまではいかなくとも300~400本は生えていそうな位の量を見かけました。キノコの仲間は、どんぐりなどのタネよりももっと細かな胞子というもので増えます。なので一度見つけると複数見つかることが多いです。

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見た目はシメジのよう...?
センボンクヌギタケを見かけたとき、シメジに似ているような印象を受けましたが、どうやら食卓でおなじみのブナシメジやしいたけと同じ仲間のようです。

写真のものはまさにそのままパッケージングされてスーパーに並んでいそうですね。ところが、このセンボンクヌギタケは可食不可のようです。やはり見た目通りにはいかないのがキノコの難しさですね。

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大きなエノキのようにも見える
同じように見えるキノコでも、細かいところが違っていたりします。例えば写真のキノコには傘の部分に縦の線が入っていると思います。これは条線と呼ばれ、キノコを見分ける際のポイントの1つになります。これだけでは判断できませんが、外でキノコを見つけたらまずは1ヶ所条線が入っているかどうか確認してみましょう。見方が変わると面白いですよ。

そんなキノコですが、見分けるのはとても難しい部類になります。ご自身で判断して食べてしまうのはとても危険なので、必ずキノコの事を知っている人と一緒に採取をしましょう。

季節違いで咲く狂い咲き 見つけるととても嬉しくなります

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タチツボスミレは最もよく見かけるスミレ
冒険の森入口付近の斜面では、季節を間違えて早く咲いてしまったタチツボスミレが綺麗な明るい紫色の花をつけています。
本来ですとタチツボスミレは3月頃から咲き始めるので、ここ最近の暖冬の影響で恐らく本来咲く時期と勘違いしてしまったのでしょう。

このように季節外れに咲く現象を狂い咲きと呼びます。桜の花が、秋や冬に咲いてしまうことが有名ですが、桜に限らず起こりうる可能性があるのです。面白いですね。

園芸を好む方はスミレになじみがあるのではないでしょうか。園芸品種としてはビオラやパンジーが非常に有名ですが、あちらと比べると花びらに派手さはなく、日本的なおしとやかさを感じられますね。
皆様は、自然下でスミレの仲間を見たことがあるでしょうか?

基本的にスミレの仲間は写真のような形をしています。この同じ形で、色や葉などの細かい違いから100種類以上に分けられている非常に面白い植物なのです。

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タチツボスミレに似たアオイスミレ
 アオイスミレはまだあいかわ公園では見つかっていませんが、恐らく見つかると思います。

その時にどのように見分けるのでしょうか...? 花びらの形などでも分かるのですが、最も分かりやすい見分けのポイントは花の中央部(花柱)が下に曲がる(アオイスミレなら中央の緑色の部分)かまっすぐ(タチツボスミレなら白色の部分)かを見ることで見わけることができます。ぜひここに注目して探してみてください。

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中央の緑色と白色の形を比較してみると?

私もスミレはお気に入りの植物で、種類の見分けに実物を見ながら挑んできましたが、似ていながらも明確な違いがあるものが多く非常に面白い種類だと感じました。

タチツボスミレは緑のある少し湿った日陰などで見ることができます。市街地では違う種類のスミレ(普通のスミレ)を見かけることが多いです。色の違いなど少し意識しながら身近なスミレに注意を向けてみると面白い発見ができますよ。

バラの花のような葉

冬の植物の面白い形に、ロゼットと呼ばれるものがあります。
重なり合いながら葉を出す様子をローズ(バラ)の花に見立てたことからロゼットと呼ばれます。冬の自然の中では、想像以上のたくさんのロゼットを見かけることができ、その形の違いを比較することが楽しい時期でもあります。

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赤色の線やトゲが目立つ
あいかわ公園でも皆様が歩く足元には、地面に葉を広げた写真のような植物をたくさん見ることができます。写真の植物は、コウゾリナと呼ばれ、草全体に赤みを帯びたトゲを持つ特徴があります。小さな点々がたくさん生えていることが見てわかるでしょうか?

コウゾリナはキク科の植物で、花の見た目はタンポポと同じに見えます。茎にも赤いトゲがあるので、よーく見ると簡単に判別することができますよ。
あいかわ公園では、冒険の森入口付近に生えていますので探してみてください。

ここで疑問なのですが、植物はいったいなぜわざわざ冬の時期をこのような地面にべたっと葉を横に広げた形で過ごすのでしょうか...?

横に葉を広げることのいい点は、踏まれても折れたりせず死なないことがあげられます。また、冬場の弱い光を葉を広げることでたくさん浴びることができるのです。こうして寒い冬に栄養を蓄え、暖かくなった春に新しい茎を出して花を咲かせるのですね。

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同じく円形に葉を広げるミチタネツケバナのロゼット

皆様も少しマニアックなロゼットの世界を観察してみてください。身の回りの植物の数の多さに驚くこと間違いなしです。

八の字のタネの不思議

あいかわ公園には、まるでカエルの掌のような葉をもつことからそう呼ばれるカエデの仲間(モミジ)が植えられています。
秋には葉が紅葉して,とても綺麗な景色を作るのですが、葉が落ちて冬になるとまた1つ違った面白さを提供してくれます。

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3cm位のタネ

今の季節に公園を訪れた際には、この漢字の「八」の字のようなモミジの種を探してみてください。種を見つけたら、二つついている種を1つずつに分け、公園で一番高さがある森のわたり橋から落としてみましょう。

一体どんな落ち方をするのでしょうか?
皆様は、同じ種であるどんぐりを落としたことがありますか?
どんぐりは、とても重みがあり真下に落ちてしまったのではないかと思います。では、羽のように軽いモミジの種はどのように落ちるのでしょう?

なんと! とても器用なことに写真の丸い部分(ここが種です)を中心にして、羽が扇風機のプロペラのようにくるくる回り、飛んでいくのです。その様は、戻ってきませんがブーメランのようです。
たくさんの種を飛ばしてみると、とてもきれいな光景を目にすることができますよ。ご家族で飛ばした距離を競い合ったりするのも面白いかもしれませんね。

あいかわ公園の自然観察ガイドでは、モミジのプロペラ飛ばし大会を行い、誰が一番遠くに飛ばせるか競争を行ったりしています。自然の不思議に、実際に触れながら楽しめるガイドイベントになっておりますので、公園にお越しの際はぜひご参加ください。

冬芽にはいろいろな種類があります

冬になると、葉を落とす植物たちは次の春に再び葉を広げる準備として、冬芽を作ります。冬芽にはいろいろな形があり、じっくり見ると植物の世界の不思議を体験することができます。

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一対のトゲを持つ
本日の写真の冬芽は、皆様が口にしたことのあるサンショウという植物の冬芽なのですが、見たことがありますか?左右対称に出るトゲが特徴的です。

サンショウは、ウナギなどにかけることで有名ですね。非常に香り強く、ピリッとした風味で人気ですが、野生のものは、香りも刺激もとても強くて驚かされます。
数年前に好奇心からサンショウの実をかじったことがあるのですが、舌がしびれるほどの刺激と、舌でなめた唇までもしびれてきた経験をしたことがあります。
意外なことに、サンショウはミカンの仲間なのです。ユズなどと同じく、トゲを持っているのも納得ですね。思い返してみると柑橘系のような清涼感のある香りだったと思いませんか?

サンショウは、写真のとおりにトゲをもっていますがこれはいったいなぜでしょうか?
もし皆様の体にトゲが生えていたらそれをどのように使いますか?

トゲの生える植物は、多くが自分を食べてしまう生き物から体を守るためにトゲをはやして攻撃しているのです。
あいかわ公園には、シカやイノシシなどの植物を食べる生き物が夜間にたくさん訪れますから、そういった敵から身を守るための植物の知恵なのです。
公園内では、森のわたり橋の奥側のスギ林に生えています。

サンショウのトゲは、大きくて鋭く、痛いので観察の際には注意してください。

ロウバイが咲いています

あいかわ公園の冒険の森に向かう途中では、今の季節にかけて、まるでロウで作られたかのような質感の黄色い花を見つけることができます。
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目印は、なんといってもこの植物の周りに漂っているとてもあまい香りです。冒険の森に向かう途中のスロープで、鼻に意識を集中させていれば自然と見つけることができると思います。
自然観察ガイドで、実際に紹介したところでは、みかんのような香りや何かわからないけれどもどこかで嗅いだことがある香りなどの意見が出ました。
皆さんはどんな感想を持つでしょうか? 是非今の季節にロウバイの香りを探してみてください。

ロウバイは蝋梅と書かれ、ウメ(バラ科)の仲間と思われがちですが、実はウメの仲間ではありません。
花が、蝋のように光沢感をもち、花の雰囲気がウメに似ているためこのように名付けられたようです。
確かに、香りは梅の花のそれに似ているかもしれません。

記事をご覧の皆様は、花の形を気にしたことがありますか?
例えば、桜の花びらは何枚でしょうか。 花はどんな形をしているでしょうか。
花の形や、花びらの数を見ることで、おおよそ植物の種類を定めることができるのです。

ウメを含めるバラ科の植物は、花びらを5枚持ちます。では写真のロウバイはどうでしょうか?
5枚以上ありますね ですので、種類が違うだろうとざっくりですが推測できるのです。少し変わった視点で見てみると、また自然が違って見えてきますよ。(園芸用などの例外ももちろんあります。)