あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

エゴツルクビオトシブミのゆりかごを探してみよう

暑い日が続いています。公園の緑は一層茂り、多くの虫たちでにぎわいを見せています。
今の季節にひそかに楽しみにしているのがこの生き物との遭遇です。
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なかなかにシャイで逃げ足が速い(飛ぶ)ので写真を撮られせくれません(笑)
この首長の生き物はオトシブミと呼ばれ、国語の授業か何かで名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。その仲間の中でもこの種類はエゴノキ科という植物の葉に集まるエゴツルクビオトシブミと呼ばれる種類です。公園のエゴノキやハクウンボクでたくさん見られます。
葉に集まったオトシブミはいったい何をすると思いますか?葉を食べに来るのでしょうか?



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答えがこちらです。巻物のようなものが残されています。これこそオトシブミが自分の子どものために用意したプレゼントなのです。
オトシブミはこの中に卵を産み付けるのですがいったいどんなメリットがあるのでしょう。    生きていくうえで必ず必要なことは食べることです。つまり生まれたばかりの赤ちゃんは安全な巻物の中にいて襲われる心配も少なくそれでいて食べるものも用意されているというわけですね。
とても賢い昆虫です。 



あいかわ公園 ツツジの図鑑
ツツジ図鑑 赤色にレンゲツツジ 黄色にキレンゲツツジ 紫色にオオムラサキツツジ、ヨドガワツツジ ピンク色にモチツツジを追加しました。
記事の構造上パソコンで見ることをお勧めします。(スマホだと現在カテゴリー検索ができません)

あいかわ公園 山野草図鑑
山野草図鑑 白色にウツギ、ホオノキ、コヒルガオ 黄色にコウゾリナを追加しました。

実は外来種?どこにでもあるアメリカフウロはトリカブトのような葉を持つ

あいかわ公園だけでなく普段生活している町に既に溶け込んでいるため、外来種や園芸種とは思われていない植物も多く存在します。
例えば身近に生えるトリカブトのような葉が特徴的なこの植物です。
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この切れ込みの有る葉に覚えのある方は多いのではないでしょうか?どこでも見ることができる一方でなんの植物か分からないものです。
これはフウロソウという仲間に所属するアメリカフウロと呼ばれる外来種です。
フウロソウの仲間は登山をする人のあこがれの植物でもあったりします。地域性が高い植物なのです。アメリカフウロはどこでも見ることができる植物ですが、花に注目してみるととてもかわいらしい色合いと形をしていますよね。

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よく見てみましょう。葉がかなり細かく分かれていますね。今の季節は緑色ですが寒い季節にはオレンジから赤色まで実に幅広い色合いを見せてくれます。葉でも楽しめる植物ですね。そしてお花ですがフウロソウの仲間は基本5枚の花弁をつけます。花びらは若干の個体差なども見られます。注目してみると花びらの先が少しへこんでいたり白とピンクの色合いが綺麗にまじりあっていたりとたくさんのことが分かりますね。
もう少しすると種ができますがこれも面白いので是非確認してみてくださいね。

変わった形のお花 ヒメハギはイカのような姿

風の丘は背丈の高い障害物がなく、直射日光にさらされるため意外と植物がありません。たまにはそんなエリアを散策してみると面白い形の花に遭遇しました。
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それがこちらのヒメハギという植物です。皆様は見かけたことがありますか? 紫色は茶色と相性がいいのかかなり見つけにくい色になっています。ですので気づかずに歩きすごしてしまっているかもしれませんね。
ヒメハギは、ヒメハギ科と呼ばれる日本では数種類しか属さない花のグループですのでこの形の花を見たことがある方は少ないでしょう。

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まず面白いのがこのひも状の不思議な物体です。花の先っちょになにやら普通の花では見かけないブラシが付いていますね。これは付属体と呼ばれる花にくっついているものです。虫が乗るとベロンと垂れ、雄しべが出てきます。

花の形にもかなり特徴が見られます。
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まるでイカのような形をしていますね。花びらが3枚でガクが2枚の計5枚からなる花になっています。一体どこが花びらでしょうか?
ひとつ前の写真の中央にある濃い2つに裂けている部分とブラシのような付属体が付いている部分の3枚が根元でくっついています。それを左右の羽のような大きなガクが包み込んでいる形になります。

毎日歩いているような場所でも季節が変わると別の植物が出てくるので面白いですね。意外な発見に遭遇すると嬉しくなりますよ。

身近な外来植物 紫色の花はショカッサイ?、ムラサキハナナ?、オオアラセイトウ?

昨日に引き続き外来種を紹介していきます。
皆様が日ごろ見かける植物たちにはきっと多くは外来種が含まれていると思いますので思い出しながら比べてみてください。
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そろそろ季節終わりな紫色のショカッサイ(ムラサキハナナ、オオアラセイトウの別名がある)も実は外来種です。

やはり繁殖力が強く簡単に定着してしまいます。背丈が高く、同時期の他の花よりも太陽光を得やすい植物の戦略なのかもしれません。
アブラナ科のため食利用が可能で、名前のショカッサイはかつての中国の諸葛孔明が食用に植えたとされることからきています。


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湿った場所を美しく彩るアヤメ科のシャガも実は外来種とされています。

もともと日本にあった植物ではなく中国が原産地とされています。

寒さにも日陰にも耐性があり、それでいて美しいお花を咲かせるため園芸にはちょうど良い種類だったのです。おまけに有毒種のためシカなどの食害にも会いません。



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日当たりのよい所をにぎわせる白やピンクの可愛い花 ハルジオンヒメジョオンも外来種です。

アメリカ原産の雑草で、畑などの環境にはよく生えています。外来種は畑との関りが深いものが多いです。
なぜならば収穫された飼料(家畜のえさ)とともに外来植物のタネが入りそのまま輸入されてきて牧草地に侵入したり、輸入された土に種が混ざっていることも多いからです。
なので畑や、畑に水を引くために隣接した河川では外来種の出現数が多くなる傾向があります。


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クローバーで人気のシロツメクサが外来種であることはとても有名なことだと思います。

江戸時代にオランダからの輸入品が壊れないように敷き詰められていた草なので詰められた草=シロツメクサです。

赤色のアカツメクサもあり背丈は十分横の広がりも十分と確かにばっちり詰められそうな印象です。このようなマメ科の外来種を見つけたら根から引っこ抜いてみましょう。丸い粒粒がくっついているのが見えると思います。それが先日コメツブツメクサで触れた根粒菌と呼ばれる重要な菌です。
菌と草でお互いに足りない養分を補い合っています。なので他の植物が生育できない痩せた土地でも生きていけます。

皆様が目にしたことのある種類も含まれていたのではないでしょうか? 外来種にも目を向けてみるとより自然を見る楽しみが増えると思いますよ。


あいかわ公園の自然に興味の湧いた方は、下のカテゴリーや月別の記事からたくさんの記事を読むことができるのでぜひ御覧ください。
黒い三角形を押すと色々なジャンル別に読めます。植物に興味の湧いた方は植物の黒三角をクリックすると園内の花や山菜などの記事が読めますよ。
また、リンクからはツツジの図鑑や園内で見ることのできる花をまとめた大ボリュームの図鑑も見ることができます。

身近に見られるランの仲間

ランの仲間は野生で見つけることが非常に難しい種類です。かつては割と生えていたそうなのですが園芸ブームによって自生していたものがどんどん取られて売りさばかれてしまったのです。自然の物は自分の物だという考えの人が減らない以上減少は避けられません。ランの仲間でも最も身近な1種類はこの園芸用のシランではないでしょうか。
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あいかわ公園にもたくさん植えてあります。もともとシランは自生種なのですが先ほどの経緯もあって自然下では滅多に見かけることはありません。園芸用でも近くで見られるのはうれしくありますね。
ランの仲間は先日のシャガと同じく花とガクが似た形のタイプで、6枚の花弁を持ちます。外側に5枚中央に1枚をつけるものが多いです。
時計でいうと7時 12時 15時がガクが変化したもので10時 2時と中央が花びらです。園芸用とはいえ見た目は自生の物と同じなのですが、とても美しい造形ですよね。
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ランの仲間の多くは写真のように花をつける茎(かけい)が葉の隙間から伸びてきてこのような形の花をつけます。ベースの形が似ていますが、種によって細部が異なってくるため大変面白いのです。さらに言うならば葉の形にも面白いものが多いです。

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シランの茎の根元ですこのように茎を抱っこするような形はラン科によく見られるもので、野外で見つけると一瞬でテンションが上がってしまうほどの衝撃を持ちます。外ではなかなか見つかりませんがこのように抱く葉を見つけたら葉の形にも注目してみましょう。

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普通の植物の線(脈と呼ぶ)はまるで網目のように葉をめぐるのですが、イネ科やラン科などは彼らよりより進んだ植物であるため葉に対して平行な脈を持ちます。茎を抱いて平行な脈であれば貴重なランの仲間である可能性は高くなります。山の中でそのような葉を探して運命的な出会いをすると癖になりますよ。まるで小さいころに木の種類もわからず偶然カブトムシを見つけてしまったかのような感覚に陥ります(笑)


あいかわ公園では見つかっていませんが、今の季節であればキンラン、ギンラン辺りは山で比較的見つけやすいです。薄暗い林床などで見つけられますよ。
野外で見つけて仮に持ち帰っても残念ながら成長することはありません。なぜならランの仲間は周辺の菌類と共生して栄養をもらっているからです。見つけたらそっと見守ってあげてくださいね。

アヤメ科の花 シャガの花にある不思議とは

以前に花のように見えるようで実は花ではない部分を紹介しました。それに続いて本日も花のように見える不思議な構造をお伝えします。
アヤメという観賞用として大変人気の高い植物があります。そちらを例にとってみましょう。
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こちらがアヤメ科のシャガと呼ばれる植物です。多くの公園や畑、園芸用で見ることができ、少し湿り気の有るところに植えてあります。
花弁が6枚あるように見えますね。実はこのアヤメの仲間は花弁3枚ガク3枚からなる植物なのです。ではガクはいったいどこにあるのでしょうか?
以前のハナミズキは裏側を確認しましたね。裏を見てみましょう。多くの場合ガクは花弁の裏側に緑色の形で花弁を包み込む支えとしてあります。
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裏にしてみました!。茎にくっついている以外ガクと思えるような場所がありません!実はこのアヤメの仲間はガクが花びらのように進化して花びらと同じような姿かたちになってしまっている花なのです!
写真上を時計の針に当てはめると花に模様が見える10時、2時、6時の3枚と模様なしの8時、12時、16時これが3枚づつセットになっています。
写真ではわかりにくいですが、模様の無い花びらが模様のあるほうより内側にあります。つまり植物学上花びらと呼ぶのはどちらでしょうか?

内側の模様の無い方が花びらですね! 一応花びらとガクで分かれていますが、いま見た通り非常にややこしいです。ですのでこのような花びらとガクに形の差がない花を同花被花(どうかひか)と呼びます。
ではこの黄色い模様はいったい何の役割だったでしょうか?ツツジの記事で実はこれも登場しましたね。
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ネクターガイドと呼ばれ、虫たちに蜜のありかを教える役割を持っています。
これは多くの花に見られるので花びらにこの模様を見つけたら虫たちへのアピールなんだと思ってみてくださいね!

面白い形の蛾 オオエグリシャチホコ

寒い季節に終わりをつげたため、あいかわ公園の壁を訪れる蛾の数も減りました。

それでも見ているとやはり数匹止まっているようなことがあります。この前は変わった形の蛾を発見しました。
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このような体高のある蛾はシャチホコガの仲間であることが多いです。

幼虫がシャチホコのように反り返るものがいます。

その中でも結構特徴がある種類がこのオオエグリシャチホコです。名前がとても強そうですね。

シャチホコガの仲間には毒はありません。ですので当然ながら手にのせてみました。
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寒い日だったのでほとんど動きません。

しかしこのオオエグリシャチホコは止まっているときと動いているときで姿かたちが全く異なるようです。

止まっているとブロック状のような蛾とは思えないような形をしていますよね。そこでつついて刺激を与え、歩かせてみました。
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歩かせてみるとしっかりと蛾と思えるような形をしていますね。

止まっているときには大きな触角を隠しているだけでなく、どうやら大きなおなかも隠していたようです。

羽の形が落葉のような模様をしています。木の皮との色にも似ていますね!この状態で止まっていたら気づけなさそうです。

身近なシャチホコ蛾の仲間では夏の終わりに出る桜毛虫ことモンクロシャチホコが最も身近でしょう。

蛾の姿は見たことが無くても幼虫を見たことが多い方はたくさんいると思います。名前の由来は幼虫の時にしか見られないため、ぜひシャチホコのような面白い形のシャチホコガを探してみてくださいね。