あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

ツバキとサザンカ 2種の似た花の違いとは?

真冬に見られる花と言うのはそれだけで貴重なものだと思います。街中や自然の中を見ていると、赤い大輪の花が咲いているのを見ることができるのですが、皆様はもう見たでしょうか。
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あいかわ公園の南駐車場では、とても綺麗なピンク色のサザンカが咲いています。色が飛びすぎてしまっていますが、実物は鮮やかな赤とピンクの間位の色合いです。

同じ時期には自然の中でヤブツバキが咲いています。こちらもあいかわ公園で見られるので見てみましょう。
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こちらがヤブツバキです。サザンカとツバキの2種類は非常に似ている種類です。

ここでは落ちた写真とまだ咲いている写真の比較なので、結構違うように見えますが、お互いに咲いている条件で比較するとそっくりです。同じツバキ科なので似ているのは当然ですよね。

ではどうやって2種の違いを見分けるのでしょうか? 
嬉しいことに花の時期には簡単に違いが分かってしまいます。


ずばり、花の落ちた後を見てみましょう。
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こちらはサザンカの花が散った後です。先ほどのヤブツバキと見比べてみると何か違いがある点に気が付きましたか?
1つ前の写真と比べてみてくださいね。



そうです。サザンカ花びら一枚一枚を落として散りツバキは花を丸ごと地面に落とすのです。今の時期ならば2種類の違いがすぐに分かりますね。

花がない時にどうしても違いを見分けたいという方は葉っぱに注目することになります。雑種などを含めると確実ではありませんがサザンカの方が葉の縁に付くギザギザが大きいのです。
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この葉っぱの端に付くギザギザを鋸歯(きょし)と言います。種類を見分ける際にかなり役に立つポイントなので、興味のある方は頭に入れておくと役に立つことがあるかもしれません。

今の季節ならば葉に触っても構いませんが、ツバキの仲間には春~秋ごろにかけてチャドクガが発生します。サザンカもヤブツバキも彼らに狙われるので、それらの時期にはあまりむやみに触らないことをお勧めします。

あいかわ公園の自然に興味の湧いた方は、下のカテゴリーや月別の記事からたくさんの記事を読むことができるのでぜひ御覧ください。
黒い三角形を押すと色々なジャンル別に読めます。植物に興味の湧いた方は植物の黒三角をクリックすると園内の花や実の記事が読めますよ。
また、リンクからはツツジの図鑑や園内で見ることのできる花をまとめた大ボリュームの図鑑も見ることができます。

巨大植物の冬芽の大きさは? ホオノキの冬芽

大きな葉を持つ植物と聞いて、皆様はどれほどの大きさの葉を思い浮かべるでしょうか。手のひら位ですか?それとも顔が隠れるくらいでしょうか。

あいかわ公園にも巨大な葉を持つ植物があります。ホオノキと言う植物で、この植物は葉も花も超巨大なのです。
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今年の春の写真ですが、これがホオノキの葉の写真です。

枯葉であれば今も見ることはできますが、大人の顔ですら簡単に覆えるほどの大きさがあります。

迫力の強い葉で、一度見ると忘れられないほどの衝撃を植え付けてくれるいい木です。木材などにも使われている意外と身近な木ですよ。

ホオノキは秋終わりごろになるとその葉を落とし、来年に向けた準備をします。これだけ大きな葉をつけるホオノキのはいったいどれほどの大きさなのか気になりますね。園内では1ヶ所手軽にホオノキが見られるところがあるのでそこで冬芽の写真を撮ってきました。
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こちらがホオノキの冬芽です。
比較の物差しがありませんがこれだけでもこの前紹介してきた芽より圧倒的に大きいのが分かるかと思います。

一見裸芽(らが(冬芽を守るものがない))のように見えますがよく見ると鞘のようなものが包んでいます。黒板に文字を書くときに使うチョークのような見た目で個人的には好きな冬芽です。
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太さは大人の小指位で長さも小指位です。園内で見られる冬芽の中で、クヌギであれば5mm位トチノキで1cm位なことを考えるととんでもなく巨大なことが分かりますね。

春先になるとこの冬芽がパカッと割れて中から鮮やかな緑が出てきます。冬芽の雰囲気をしっかり見て冬を耐え忍ぶ姿を見届けてから芽生えるところを見ると、植物もしっかりと生きているんだなと感じることができるので、皆様もこの冬は植物の成長を見届けてみてはいかがでしょうか?

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粉を吹き出すツチグリと言うキノコ

冬場から3月頃にかけて少し日陰の土の上には変わったキノコが現れます。見た目も面白いこのキノコは生き抜くための戦略でも面白い特徴があるのです。
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まずはそのキノコ、ツチグリ探しに挑戦してみましょう。

自然の中でツチグリに出会うためには、地面から顔を出している彼らを見つけなければなりません。これは手ごわい方で、実際には土の上にポンっと忘れ去られたかのように置かれていますので、割と簡単に見つかります。写真中央を見てみてくださいね。穴の開いたやつがツチグリです。

キノコの仲間は冬場にしいたけなども見られますが、実はあれは胞子を飛ばすための形なんですね。しいたけも下に白い紙などを置いておくと胞子が積もります。このツチグリも胞子を飛ばすわけです。

もしも自分が動けたら効率的に胞子を飛ばすことができますよね。そこで彼らは移動することにしたのです。
彼らは乾燥が続いた時雨が降った時で姿を変えます。まずは2つの姿を見てみましょう。
f:id:aikawa_park:20201216132505j:plainf:id:aikawa_park:20201216132328j:plain上が雨の時の姿で下が乾燥したときの姿です。左はすぐに見つけられますが右はなかなか見つけられません。

この違いから分かるように晴が続いた時にはテントの足のように広げている部分を丸め、風などでコロコロと転がって移動するのです。そして雨で水分を補給すると足を広げ、そこで胞子を飛ばすわけですね。

写真左のお饅頭のような場所をプッシュすると、驚くほどの胞子が出ます。自然界では人間のように押してくれる者はいません。では一体どのように胞子を押し出すと思いますか?



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それがです。
高い所から落ちてきてこのツチグリのお饅頭部分に当たると、それが衝撃となり胞子を飛ばしてくれるのですね。

ツチグリのお饅頭部分を破くと内側が見れるのですが、ここの質感がビーズクッションのようでとても心地いいので一度触れてみることをお勧めします。

触れるときは胞子を飛ばして彼らの生存に貢献してあげましょう。寒い冬に体験できる面白い自然の不思議なので、興味のある方はイベントに参加してツチグリに触ってみたいなどと指名してみてくださいね。

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冬に現れる面白い蛾  フユシャクの♀の姿は?

真冬になると虫も植物も見られない! そんな風に思われがちですが、この冬だからこそ見られる面白い虫と言うものもいます。それが今回紹介するフユシャクの仲間です。この仲間は11月下旬頃~2月頃までと真冬の期間だけ見ることができるのです。
ちなみにフユシャクの仲間は私の力では種類の特定が難しいのでフユシャクの仲間として紹介します。
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真冬になるとパークセンターの夜間の街灯の明かりにこの蛾たちが集まってきます。
翅を綺麗に折り重ねたような姿をしているものが多い印象です。
冬に出てくるからか色合いは地味なものが多いようで、これはコンクリートや木の皮などに張り付いていても姿を見つけられにくいようにしているのでしょう。
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もはやここまでそっくりだと感動してしまいます。模様そっくりと言うよりも模様をそのまま写したような色合いのものもいます。
こうして壁にやってくるものはです。以前のヤママユのように触角の形が櫛型か細いかのようなポイントで見分けるのでしょうか? その答えは♀の姿にあります。
先日の自然観察イベントでリピーターのご家族をご案内していると、お子様が不思議な生き物を発見してくれたのです。それがフユシャクの♀でした。
蛾の♀の姿をイメージしてスクロールしてみてくださいね。





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これがフユシャクの♀の姿です。この蛾の仲間はかなり特殊な姿をしています。なんと! 蛾の仲間であるのに飛ぶための羽を持たないのです。なので初めて見た方はこれが蛾だとは思わず、陸生のヤゴか何かかな?と思ってしまいます。よくよく見てみると退化した小さな羽が付いていますね。体には2つの点が走っているので、種類の特定が出来そうではありますね。学芸員の方に種類を絞ってもらった所、ナミスジフユナミシャクではないかとの事でした。名前がかっこいいですね。
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♀は木などの皮に隠れ、フェロモンを出して♂を呼んで交尾をします。ヤママユの仲間と同じように口も退化しているので、大人になってからは食事をとりません。つまり見られる機会もなかなかに限られているというわけですね。そのため、意識的に探していかないと出会えない種類です。
私も去年から出会いたいと思っていたフユシャクの♀にようやく出会えてとても嬉しかったです。
今年は何種類かのフユシャクの♀に出会いたいところです。

トチノキの冬芽には粘り気があります

基本的な冬芽である鱗芽(りんが)と裸芽(らが)をこの前の記事で紹介しました。冬芽の中にはとても変わった面白い特徴を持つものがいます。その1種がトチ餅でおなじみのトチノキの冬芽です。
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トチノキ自体非常に大きな葉をつけるので冬芽がそれだけ大きいことは想像しやすいのですが、冬芽の赤い部分に注目してみてください。
なにやらフルーツタルトの上で宝石のように輝くコーティングされたフルーツのようなツヤがあることに気が付いたでしょうか?
これこそトチノキの不思議です。
ちなみに横に伸びている線状の物はただのクモの糸です。
身近なものでこのようにコーティングされているものと言えば何があるでしょうか?例えばりんご飴なんかもこれと似たようにコーティングされていますよね。
ではこの冬芽はよりおいしく誰かに食べてもらうためにつやを出しているのでしょうか?

そんなことはありませんね。実は自然界には冬芽を利用する生き物がいます。

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鱗芽の記事で紹介したイヌシデの冬芽ですが、実は写真は両方ともイヌシデの冬芽です。右はイヌシデメフクレフシと言うダニの一部がテントのように中に侵入している冬芽です。安全に見える冬芽も実は防御がバッチリと言うわけではないのですね。鳥の中には冬芽を食べるものもいます。
そんな色々な敵から身を守るのがこの粘液と言うわけです。ダニや小さな生き物であればこれに絡めとられてそのまま死んでしまうわけですね。
なかなかのべたつき具合で、人間が触れてもべたべたしています。なので小型の虫たちには抜け出せない恐ろしいトラップになっていることでしょう。
後は単純に寒さなどから芽を守っています。樹脂なので水をはじくのです。寒い日に外で手を洗った後の寒さはこたえますよね。それを防いでいるわけです。 冬の厳しい寒さに耐えるための素晴らしい策です。

一重に冬芽と言っても様々な戦略があることを見ることができましたね。冬芽の世界を覗いてみてはいかがでしょうか?

冬芽のタイプ 裸芽(らが)

先日は鱗が張り付いたかのような面白い形の鱗芽(りんが)を紹介しました。もう1つよく見られるものとしては、裸芽があります。一体どんな形をしているのでしょうか?文字から想像してスクロールしてみてくださいね。






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こちらはヤマボウシと言う植物です。冬芽の形を見てみると、まるで爪のように鋭くとがっていますね。これが裸芽に見られる特徴です。冬場は乾燥するのでこの芽もなかなかに固くなり、刺さりそうな位の硬度があります。裸芽は先日の鱗芽に比べると数自体は少なく、あいかわ公園では手軽に見られるのはヤマボウシとそのお友達のアメリハナミズキくらいでしょうか。
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仲間同士あってかなり似ていますね。 裸の名の通りほとんどむき出しになっているのが特徴です。
裸芽はなかなか見つけられず、いい例に困っていたのですが普段入らない場所を散策するとやはり面白いものを見つけました。
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掌を開いて上にあるものをつかもうとしているかのような姿をしているこの冬芽はアワブキと言う植物です。初めて名前を聞く方も多いかと思いますが、この特徴から冬の方が種類を特定しやすい植物かもしれません。
葉を広げる時期に種類の当たりをつけておいて、冬芽の形で種類をバッチリ特定!なんてことが出来たら面白いですよね。似た葉の植物はあってもこれだけ特徴的な冬芽はそうそうありません。ぜひとも挑戦してみてくださいね。
しっかりと芽を見てあげればこの芽が鱗ではなく褐色の毛だけにおおわれていることに気づけると思います。その些細な違いが重要なんです!

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冬芽を発見することで春~秋の姿以外の植物の姿を知ることができます。そうして植物の知識を蓄えたらぜひその植物を利用する他の生き物にも目を向けてみましょう。アワブキは夏に樹液に集まるスミナガシと言う蝶の植草です。園内では比較的見られる蝶なのですが、やはり食草が生えていたようですね。蝶の姿を見たから食草を探してみる。逆に食草を見つけたからその蝶を見つけられる可能性がある。このように相互に考えたりして見るとより自然観察が面白くなると思いますよ。

私もアワブキを見つけたので、この春はこれを食草とするアオバセセリを探してみたいと思います。減少している蝶なので、いてくれたらうれしいですね!

冬芽の季節になりました。

本格的に寒くなってきましたね。植物達も自然の変化を感じ取って、すっかりと冬の姿になりました。そして今の季節だからこそ楽しめるのが冬芽(ふゆめ)の観察です。興味のある方はいつもたくさんの葉をつけているあの植物たちの今の姿を再確認してみましょう。特に枝先に注目です!
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これが冬芽です。芽とあるように、これは来年再び葉を広げる部分なのです。寒い冬をこのような形で過ごし、また暖かい気候がやってくるのを待っているのですね。この冬芽は非常にマニアックなテーマではあるものの、植物ごとに大きな違いが見られるのでとても面白いのです。形もたくさんあるんですよ。
あいかわ公園の冬芽の中でも特に目を引くのはコブシの冬芽でしょう。先ほどの爪のような芽と違い、なんともこもこしているのです。
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習字の筆のような質感を持ったコブシの冬芽は、なでてみるとまさに皆様が想像しているような滑らかな肌触りで、猫や犬を撫でているかのような心地よさがあります。大きな冬芽なのですが、これを切り開いてみるとぐるりと巻くように葉が入っています。
そしてコブシの場合冬芽にはもう1つの面白い特徴があります。先ほどの大きなもこもこは花をつける芽なのです!芽の時点で花と葉が決まっているんですね。
せっかくなので葉をつける冬芽も見てみましょう。
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同じコブシの芽でも全然違いますよね。細長い形をして毛の量も少ないのが特徴と言えるでしょうか。コブシの花を見たことがある人は想像いやすいと思いますが、コブシの花と言うのは枝の先端に咲きます。
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このように冬芽だけを見ていても気づかないようなことが花の時の姿などから想像できるのも冬芽の面白い所ですね。自然の情報をどんどん蓄えていくことで、その時は意味がないように思える知識が後々繋がってくるのです。
例えばコブシはモクレンと言う植物の仲間なのですが、冬芽の写真を見てみると付け根の部分にぐるりと線状に一周する模様が付いています。
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この些細ながらも見落としてしまうようなポイントを見ることで何の仲間かが分かってしまうんですね。見様もぜひ、細部にこだわって注目してみてください。そのポイントがいつか何かに繋がってくると思いますよ。