あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

ナナフシの子どもはどんな姿?

石小屋ダムの方面には度々蝶の様子を見に行ったり、グミの実の様子を見に行ったりしているのですが、いつもと違うルートも探索してみることにしました。そこでウツギの仲間らしきものが花を咲かせているのを発見したのです。
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ウツギの仲間は蝶がたくさんやってくる花なので、頭の中にウツギスポットとして入れておこうかと思います。咲く時期が早いですから、ヒメウツギでしょうか?
このウツギの仲間は似た種類が多い厄介な植物です。葉の形や裏側などを確認しながらじっくり眺めていると、視界に違和感を覚えました。
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私の視点からするとこのような感じです。
緑色の美しい葉の中に、少しおかしな緑色がありますね。写真の左下を見てみてください。小さな点線のようなナナフシがいますね。
春先にいることは知っているのですが、狙って出会えるものではないのでとてもラッキーでした。
せっかくですから拡大してみましょう。
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実は先ほどの写真はナナフシが分かりやすいように動かした後です。
彼らも狙っていたのか分かりませんが、この写真のように葉に走る脈に沿ってぴったりと収まっていました。生まれながらにして忍者のような技ですね。
足を見ると分かりますが前に伸びているのは触角ではなく前足です。虫は足を6本持つという話は有名ですよね。
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少しつつくことで態勢が変わりました。これで触角の長さが分かります。長ければエダナナフシ、短ければナナフシモドキ(ナナフシ)です。
今回のは短いのでナナフシモドキでしょうね。
思わぬ遭遇にびっくりでしたが、子供のナナフシに出会うといういい体験をすることができました。ナナフシはサクラの葉にもやってくるので、意外と身近な存在です。皆様もふとした時に葉を見てみると、そこにはばれないように身をひそめるナナフシの仲間がいるかもしれません。

道端の小さなイチゴの正体とは? ヘビイチゴの仲間を探してみよう!

気温が上がると一気に自然が変化しますね。
園内は華やかになりつつありますが、桜などで上ばかり見ていると足元に咲く小さな花たちに気が付けませんよ。
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今日見ていくのはだいたいどこにでもあるヘビイチゴと言う植物です。

街中に堂々とある植物ではないのですが、林のような場所であればだいたい見つかる植物ですね。
時期がもう少し進むと赤いイチゴが付きます。

しかし、キイチゴの仲間と違って美味しくありません。園内でもヘビイチゴの実はなるのでもう少ししたら探してみるのもいいかもしれませんね。
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ところで、イチゴの花を見たことがある人と言うのは意外と少ない気がします。写真ではイチゴになりそうな部分が映っているのですが分かりますか?


写真中央に丸いお団子状のものがありますね。ここがイチゴになる部分です。

この部分の違いで似た種類と見分けられたりするので、注目してみてください。例えば同じく4月頃に咲くミツバツチグリと言う花を見てみましょう。
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見てわかる通り花の写真中央にイチゴの元になる団子状の部分がありませんね。

こうした特徴を見て行けば身近な植物の違いが分かるような気がしませんか?

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温かくなったばかりなので開こうとしている花もたくさん見つかりました。アリやアブの仲間などたくさんの仲間たちが蜜を求めて花を訪れています。
虫は蜜をもらい、花は花粉を運んでもらう様はよく見かけますが、とてもよくできた不思議なシステムですよね。

春はこうした小さな世界で生き物たちが互いに利用し合って生きている様子を観察しやすい季節です。
上を見上げて美しい花を見るのもいいですか、足元の花にもぜひ目を向けてみてくださいね。

ぐるぐる巻いたゼンマイたち

ゼンマイと言う名前を聞いたことがあるでしょうか? 春にとても面白い形で出てくるシダ植物の仲間で、ビビンバに食材として入っているものです。
焼肉屋でビビンバを食べた時に不思議な食感の茶色いヒモみたいなやつがありますよね。あれがゼンマイです。食材になる前はどんな姿をしているのでしょうか?
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絵文字のクエスチョンマークのような姿をしたこのフワフワしたものが、芽生え始めのゼンマイですね。とてもかわいい姿なので一度目の前で見たら間違えることはないと思います。
芽生えの時にはもこもこした綿が付いているんですよ。拡大してみてみましょう。
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植物とは思えない質感をしていますよね。シダの仲間は芽生え始めの時にもこもこをまとって出てくるものがいるのですが、ゼンマイは断トツのもこもこ具合です。
ぐるぐる渦巻いている姿から想像できるかとは思いますが、このままぐんぐんと立ち上がっていきます。一応写真にも写っていますがこの緑の所が葉です。山菜として食べるときには大抵茎の所だけなので、葉は食べませんね。
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ゼンマイの面白い所は成長段階で個性が見られるところなんですよね。芽生え~少し経った頃までで雰囲気がかなり違います。
この写真は本当に芽生えたばかりなのですが、身を寄せ合って暖を取っているかのような感じに見えませんか?
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ちょっと大きくなってくるとお互いに距離を取り合っているような場面に見えます。なんだかもこもこも茶色くなってしっかりした髪の毛のように見えます。顔を90度横向けて見るととてつもなく尖ったリーゼントのように見えて面白いですよ。
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ちなみにゼンマイには葉をつける茎と胞子をつける茎があります。この写真が胞子の方で、これを取ってしまうと次の代に繋がらなくなってしまうので採取はNGですね。かといって葉の方をすべて取るのもNGです。
どこかで採取することがあれば気を付けておきましょう。

個人的には春が来た印象の強いこの丸いゼンマイですが、多くの方が想像するのはビビンバのヒモだったかと思います。
ゼンマイは山の付近では意外と簡単に見つかるので探してみるのも面白いと思いますよ。

ツクシの下には何がある? ツクシとスギナの不思議な関係

園内のパークセンター付近には季節ごとに様々な花が植えられている花壇があります。
今は冬の物から春の物にちょうど植え替えられたばかりなのですが、大型の色とりどりの花が植えられています。
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花壇なので見栄えをよくするために花の周りは草むしりが時々入るのですが、何やら緑色の草がパズルのピースのように土の上に散っています。
このお花の葉っぱでしょうか?
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これこそ今回のテーマであるツクシの葉っぱ部分です。右手前に生えている茶色っぽい物体がツクシですね。
春の山菜としてツクシを食べたことのある方もいるかと思います。しかし疑問に思ったことはありませんか?
「なぜツクシは茶色いんだろう?」
通常の植物であれば緑色をしていますよね。これは理科の授業で習ったように、植物は太陽の光と水と二酸化炭素で光合成を行うというのが関係しています。懐かしいですね。
ではツクシのように茶色い植物は何をしているのか?と思われた方もいるかもしれませんね。
実はツクシと言うのはスギナと言う植物の、種を増やすための部分なのです。
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ツクシの先端をじっくりと見てみましょう。
そうすると松ぼっくりを小さくしたようなものがくっついているのが分かります。
この部分から胞子と言う粉を飛ばして周囲に撒き散らすのがツクシの役目です。ツクシが本体なのではなくてスギナと言う緑色の植物が本体だったんですね。驚きです。
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先ほどの写真ですがスギナの葉はツクシと地下でつながっています。この葉の下に根が深く広がっており、スギナは自身の栄養を使って葉を出せるので、一度発生するとなかなか取り除けない厄介な草とされています。
加えて先ほどの胞子でも繁殖しますので、ツクシが出てしまうと全てのスギナを取り除くのはかなり難しいと言えるでしょう。
春先は他の草も少なく探しやすいので、ツクシだけでなくスギナの根を掘ってみて遊んでみるのもいいかもしれませんね。

山野草に興味のある方は園内の図鑑をどうぞ!春図鑑を新しく更新しています。
aikawa-park-sanyasou.hatenablog.jp

ニホントカゲは日向で頻繁に見かけます。

昼間は暑い位の気温ですね。園内を歩いているとぶーんと言う羽音やかさかさと言う落葉の擦れる音などが聞こえます。
その中でも人が近づいた時に急に鳴るガサガサ!と言う音が聞こえたら注意しましょう。
トカゲがこちらの気配を察知して逃げ始めたのかもしれません。
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急な音とともに現れたのはニホントカゲです。園内ではカナヘビとニホントカゲの2種類が見つかるのですが、体感出現率は1:9くらいです。

圧倒的にニホントカゲの方がよく見かけますね。そしてニホントカゲの方が速いです。もし捕まえたい方は、トカゲを見つけた時の周辺の環境によってはほぼ捕まえられないのであきらめるのも重要です。
蝶たちと同じように遠目から少しづつ近づいていきましょう。
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ちょっと顔の雰囲気が分かるようになってきましたね。これぐらいになると鱗の感じもよくわかります。
尾の方まで眺めてよく見てみると、尻尾の方の色がまだ青っぽいですね。きっと目にしたことがあるかと思いますが、ニホントカゲの子どもは鮮やかな青い光沢を持ったあの子なのです。
この子は大きさもまだ小さかったのであと1回脱皮するのかもしれません。
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少し角度を変えつつ撮っていると、敵と勘違いされてしまったのかこの斜面を一気に下り始めました。久々にトカゲの逃げる場面を見ましたが早いですね~!
一気に10m程先の林の方へ走って逃げていきました。やはり近くで自然のままとるのは難しいです。

トカゲを捕まえたい方は自分の靴を利用してみるといいですよ。暗い方に行く性質があるのか、不思議なことに片足を立てて日陰を作ってあげるとそこに入ってくることがあります。

真っ赤な尻尾のようなお花はアカシデ

もはや熱い位の陽気の中、園内を散策していると赤い不思議なお花を発見しました。なんだかどこかで見たことのあるような形の花なのですが見覚えがあるでしょうか?
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空中に動物のしっぽのようなものが浮かんでいます。写真中に写っていることからも木全体で見てみると予想以上の量がありますね。

特徴は赤色で松ぼっくりのようなものが付いているという辺りでしょうか? つい最近そんな花を紹介したような気がしますね。もしかするとこのブログを継続して見て下さっている方はピンときたかもしれません。
aikawa-park.hatenablog.com
3月頭の記事でヤマハンノキと言う植物の花を紹介しました。茶色っぽい花で動物のしっぽのような花を咲かせるという話をしましたね。

名前こそ違いますが花の形はかなり似ています。咲く時期も同じとなると導かれる答えは1つですよね。

ヤマハンノキと今回のアカシデは同じカバノキ科と言う植物の仲間なのです。
サクラの仲間が姿は似ていながらも種類が違うように、このカバノキ科も動物のしっぽのような花をつけるという点では似ているのですね。

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よく見てみるとかなり凸凹していますね。この隙間に花を咲かせるという点も同じです。
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上の方を見てみると花らしくはありませんが、咲いていますね。 近寄ってみないと分かりません。

アカシデは尾状花序(びじょうかじょ)と言うそのまんま尻尾のような形を現した名前なのですが、まさにその通りでいい名前だと思います。

身近な植物で尾状花序になる樹木は良く見つかるので、この形を見つけたからと言ってカバノキの仲間と断定することはできませんが、印象に残る形ではあるのでぜひ探してみてください。

シデの仲間に興味の湧いた方は種の姿を見てみるとさらに理解が深まるかもしれません。
aikawa-park.hatenablog.com


あいかわ公園の自然に興味の湧いた方は、下のカテゴリーや月別の記事からたくさんの記事を読むことができるのでぜひ御覧ください。
黒い三角形を押すと色々なジャンル別に読めます。植物に興味の湧いた方は植物の黒三角をクリックすると園内の花や実の記事が読めますよ。
また、リンクからはツツジの図鑑や園内で見ることのできる花をまとめた大ボリュームの図鑑も見ることができます。

コンクリートそっくりの蛾は、ヒロバトガリエダシャク?

12月~2月にかけてフユシャクと言う冬に現れる蛾を探していました。見られる種類がどんどんと移り変わっていく面白かったのですが、彼らの時期もおしまいです。それと移り変わるように可愛らしい蛾たちが見られるようになりました。
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恐らくヒロバトガリエダシャクではないかと思われる蛾なのですが、この姿は本当の姿ではありません。コンクリートなどの物に擬態するための姿なのではないかと個人的には思っています。

蛾と言えば大きな触角に丸い大きな複眼が特徴的ですが、そういったものが見られませんよね。
この姿をつついてあげると慌てて移動モードに入ります。
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するとかわいらしい姿を見せてくれます。
1枚目ではまるでドクガの仲間かのようなとげとげしい印象を受けていた毛も、この姿になるとぬいぐるみのようなフワフワしたものに見えますね。
蛾の記事では毎回言っているような気がしますが、この絨毯のような質感が癖になるのです。

光によく集まる蛾の仲間はコンクリートやレンガなどの物体につかまっているのをよく見かけます。
細い足でどのようにつかまっているのか気になるところだったので少し拡大して撮ってみました。
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足はやはり細いですが、先端にカブトムシたちと同じようにフック状の部分があることが分かります。人間の肌などにつかまれるのは分かるのですが、これでコンクリートの凸凹にしがみついていると考えるとなかなかにすごいですね。
ロッククライミングしているときのようなギリギリの感じになりそうです。

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この姿が一枚目の触覚を隠しているときと、移動中の姿の変更タイミングです。
この姿で腕立て伏せのような行動をして触角を綺麗に内側にしまい込みます。技を仕込んだ動物を見ているようで感心してしまうのですが、私はこの動作が好きなのでまたつついて起こしてしまうんですよね。
その結果どこかに飛んで行ってしまいました。

ヒロバトガリエダシャクと思われるこの蛾は、一年の内3月と4月の短い期間にだけ現れます。食わず嫌いせずに触れ合ってみると、これまで知らなかった興味を持てるかもしれませんよ。