初夏の終わりを告げる白い椿
6月に入ると様々なところで白い大輪の花を目にするはずです。
初夏に花が丸ごと落ちているさまを見て夏に椿が咲くなんてと思う方もいるかもしれません。その植物はツバキ科のヒメシャラorナツツバキという植物です。
ナツツバキは掌より小さいくらいの花なのですが、この時期に咲く花としてはとても大きいです。花びらはツバキ科らしく5枚で中心に黄色い雄しべが多数見えるのも共通点です。
ナツツバキはこの白と黄色の色合いがとても綺麗なのです。芸術品のような美しい細工がされているんですよ。
今日はこのツバキの仲間のナツツバキを分解してじっくり見てみましょう。
まずは花弁を取り除いてみました。 茶道具の茶筅のような
中はこのようになっています。
上から見ると無数にあった雄しべですが、根元にたどってみると束になっていることが分かります。
例えばバラ科は5枚の花弁を持つものが多いですよね。植物ごとの花弁の傾向というのは結構意識されます。
実はおしべにもこういった傾向が見られるんです。ツバキ科は写真のように根元がつながったおしべを持つという面白い特徴があります。
バラバラにならずに綺麗に5つの雄しべを取ることができました!
雄しべの根元を見てみてください。
色が濃い色に変わっているのが分かるでしょうか?
リンゴの中心にある蜜によってリンゴの色が変わるように、ツバキのこの部分にもまた蜜がたまっているのです。
ツバキの仲間の蜜は虫や鳥たちが大好きで、この部分を求めて顔を突っ込みます。
すると顔にはたくさんの花粉が付くわけですね。ナツツバキは舐めてませんが、ヤブツバキの蜜はとても甘い味わいでしたよ。
花弁はこちら。
装飾が施されているかのようで大変美しい花びらです。
質感はすべすべでよく見ると花びらにも脈が走っているのが分かります。これが模様になっていてとても綺麗ですね。ナツツバキの花は鳥や昆虫にその花粉の散布を頼っており、花期にはハナバチ類やスズメバチ類、小型のハナムグリ系もよく訪れており、初夏の貴重な餌資源ともなります。
厄介な点といえばツバキ科らしく毒針毛を持つチャドクガの発生が起こる点でしょうか。綺麗なバラにはトゲがあるかのようなデメリットもあります。
そんなナツツバキの花ですが、なんと朝に開いてその日の夕方には散ってしまう一日花です。
美しい花が一日で終わってしまうのはもったいない気がしますね。ナツツバキの木の下にはこのようなもの寂しい光景が広がっています。
水辺ではしゃぐ子供たちの活気と、傍らで散るナツツバキ。真逆の印象を受ける初夏の姿が印象的ですね。