あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

カシノナガキクイムシの脅威

10月25日のイベント、自然観察ガイドはお休みします
あいかわ公園の木を見ていると、これまで見たことがないような木の状態に出くわしました。木がまるで粉を吹いているように荒らされているのです。その様は木材加工用のベルトサンダーや紙やすりで木をこすったときに出る粉を木にまぶしたような姿です。昆虫学芸員の方に相談したところ、昨今ナラ枯れで神奈川県を騒がせているカシノナガキクイムシ(以下カシナガ)だとのことでした。私も知ったばかりなのですが、得た知識を皆様に共有したいと思います。
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県内では3年ほど前に発見されたこのカシナガによる被害は、たったの3年で県内のいたるところで見られるような状況になっています。特徴は木の中に侵入した幼虫が出す細かい木くず(フラスという)です。よく見ると2mmに満たない位の小さな穴が開いています。カシナガは、♂が特定の木をターゲットに定め、フェロモンを出して木に他の個体を誘い込むため、対象となった木には多数の虫が入り込みます。そのため、その木はかなりの粉(フラス)と穴が見られるようになります。
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写真の小さなものが侵入痕ですね。かなり小さい虫であることが分かると思います。話を聞くに、今年初めて入られた可能性が高いとのことでした。近隣の厚木方面エリアでは既に多数みられていることからいよいよ来てしまったかと言う所ですね。このカシナガの何が問題かと言うと健康な木がそのまま立ち枯れしてしまうという点です。三浦半島や川崎、県央の座間などのエリアでは、季節外れに紅葉をしている木が目立つようになっています。端的に述べると多数のカシナガが入ることで木の持つ水を吸い上げる機能が阻害され、枯れてしまうのです。
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足元にたまった多数の粉(フラス)はカシナガの幼虫が食い荒らしている証です。では彼らは木を食べているのでしょうか?姿を写真で納めていないので想像しにくいかもしれませんが、彼らは体の一部に共生している菌を持っています。カシナガはその菌を木の中に植え付けて増殖した菌を食べます。菌は繁殖することで木を枯らし、さらに菌糸を広げて勢力を増すことができます。お互いwin-winの関係を築いているわけです。先ほどの写真のように多数のカシナガが入ることで、それだけ多数の病原菌が入り込むわけですから、やがて枯れてしまうということですね。
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対象の木はかなりの穴が開いており、樹液が出ています。なので樹液に集まる虫たちにとっては都合のいい環境なのかもしれません。一方でハチたちもかなり集まってきてしまっています。とても危ないですね。
広がり方が尋常でないスピードのため対策も難しいようですが、対策しなければ公園の木が枯れて行ってしまうかもしれません。
しかしその生き方の戦略にはなかなか面白い点も多いです。例えば侵入する木を選択し、多くの仲間を集める戦略や菌類を利用するなどの話はなかなか見られません。また、キクイムシと言う馴染みのない生き物を調べることもまた面白いです。調べることすべてが新鮮と言うのはあまりありません!
ナラ枯れという点が注目されがちなカシノナガキクイムシですが、彼らの生態にも目を向けてみるとなかなかに面白い発見ができると思いますよ。私もさらに情報を集めてみたいと思います。