あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

スミレにそっくり? ナガバノスミレサイシンとスミレの違いを比較!

あまりにも暖かい日が続いているのでもしかするとスミレの仲間が咲いているかな?と期待しながら昨年見つけたポイントを歩いていると、早くもナガバノスミレサイシンが咲いていました。
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日で透けた白色と淡い紫の色合いがたまりませんね~! とても春らしさを感じる植物だと思います。ナガバノスミレサイシンは太平洋側でよく見られる種類で、日本海側のスミレサイシンとは生息がはっきりと分かれている面白い種類です。
去年は3月20日ごろに姿を見かけたので、少し春が速いのでしょうか?人間が速い遅いを判断するよりも植物の方がきっと違いに気が付いていることでしょう。

スミレサイシンの仲間は種数があまりみられないので園内ではナガバノスミレサイシンとその白花種しか見つけられていません。なので特徴さえ押さえておけば割と簡単に見分けることができます。紫色のスミレの仲間を見つけた時にはそのスミレを横から見てあげましょう!
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どんな印象を受けるでしょうか?花弁がグラデーションで綺麗、ニョキっと立ち上がっているなどなど目につくところはあると思います。見て欲しい場所は花のお尻の部分ですね。ここは距(きょ)と言う奥に蜜がためられている場所なのですが、スミレサイシンの仲間はここに特徴があります。
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これは色が非常に似ているタチツボスミレを横から見た時の姿です。何か気が付きましたか?

そうです!タチツボスミレなどのよく見かけるスミレと言うのはこの距の部分が細めなんですね。一方でスミレサイシンの仲間はかなりぽてっとした距を持っていますね。

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他にもいろいろな見分けるポイントはあるのですが、植物の見分けでは最初はあまりポイントを絞りすぎないこともおススメです。
分かりやすい所に絞ったほうがこんがらがらずに済みますよね。

スミレの仲間はかなり身近な所で見られるはずなので、足元で見かけることがあれば横から見て細さ比べをしてみてください。そしてそこからスミレの仲間を写真検索してみると、色以外に一体何が違うのか?と最初は思ってしまうほどの些細な、それでいて見分けていくと確実に違うポイントが分かるようになっていきます。スミレの魅力に引き込まれてしまわないように注意が必要ですよ。

今年初のタチツボスミレ

スミレの花はかなり特徴的な形をしており、毎年見るのが楽しみな植物です。例年に比べるとかなり遅い時期となりましたが今年もようやくタチツボスミレを見ることができましたよ。
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毎年おなじみの冒険の森入口エリアにて多数のタチツボスミレが咲いていることに気が付きました。数日前までは葉だけで何もなかったのですが、あっという間に出てくるものですね。タチツボスミレはこれぞスミレと言った感じで、誰しもが見たことのある種類だと思います。
個性も結構豊かで、色味の濃いもの薄いものが簡単に見つかったり、葉に赤い線が入るなどで種類が違ったりする面白い種類です。
今回見つけたエリアでも色の違うものを見つけましたよ。
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少々分かりにくいでしょうか?
白色がかなり強いタチツボスミレですね。これはまだ薄い紫がありますが、種類によっては真っ白なものがあります。なかなかない種類ですが、シロバナタチツボスミレと言うものですね。
園内では残念ながら見つかっていないのですが、シロバナになるとこんなに色が違います。
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まさに純白と言うにふさわしい白さですよね。これは先ほどのタチツボスミレの稀に出るシロバナの中で、さらに面白い特色が出たオトメスミレと言うスミレです。その特色と言うのは、白花種は花が真っ白なのですが、このオトメスミレは後ろの出っ張り部分だけが紫色になるというものです。
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花弁には紫が出ずにお尻の部分だけ濃い色に染まるなんて言う不思議なことが自然界では起こるんですね。まさに可能性は無限大と言う感じでわくわくしてしまいます!

このオトメスミレもタチツボスミレがあって偶然に生まれたわけですから、身近な植物が同じ姿をしながら配色が違うなんてことが身近で起きているかもしれないのです。植物の色の違いは普段からその植物を見ていないとなかなか気が付きにくいものです。しかし、身近なものであれば普段からちょっと色にまで気を使ってみてあげるだけで変化に気が付けると思うので、皆様もぜひこの春は色の違いが持つロマンを探してみて欲しいなと思います。

身近でたくさん咲いていると、こういう違いを見つけやすいのがいいですね。

ツツジが有名なあいかわ公園。ツツジを食べる希少なシジミチョウ、コツバメも現れます。

3月の上旬もあっという間に終わり、すっかり暖かい陽気が続いていますね。

いよいよ待ち望んでいた季節がやってきました。
春にだけ現れる希少な蝶たちのシーズンが始まります!
早春に現れるコツバメと言う蝶がまずその第一弾です!
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コツバメはユニークなシジミチョウで、有毒なツツジの仲間を食べます。自生のツツジが生えるような環境は限られており、なかなか見られない蝶なのですが、園内の4万本を超えるツツジのおかげかよく目にします。

コツバメは飛ぶのが速いシジミチョウの仲間です。今の時期には生まれたばかりの個体が見られるので全体的に綺麗な子が多く、写真を撮るには最高の時期ですね。 

見た目はかなり特徴的なので間違えることはありません。ぱっと見だけでもかなり色と体に特徴がありそうです。

警戒心はやや強めでしょうか?食事中でないとなかなか近づけません。
しかし、園内のツツジがたくさんあるため、近づく機会が多く、間近で見ることができました。
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地面の上で逃げない子に遭遇しました。 ここまで近づいてくると彼らの色合いと特徴が分かりますね!

頭の方を見てみましょう。体にたくさんの毛が生えていますね。これは分かりやすいポイントです。そして色にも注目してみてください。茶色系のシジミチョウでこの早春に見られるものはいないので、コツバメには似たものがいません。

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確かに表も裏も派手さはない種類ですが、表翅の木造家具のような色が私は好きですね。 写真のように翅の表側を見てみると紺色のような色合いが見えます。他のシジミチョウでは見られない紺色と青を混ぜたような美しい翅を持っています。

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ありがたいことに目先ぎりぎりの5cm位まで近づくことができました。近づいてみると毛に緑色系の輝きがありますね。f:id:aikawa_park:20210310142903j:plain
↑のムラサキシジミのように翅の表側に光を反射する鱗粉があるのは知っていますが、裏側にもそのような色に見せる鱗粉があるのでしょうか?よく見ると緑色と紺色をしていますね。

構造色(こうぞうしょく)と呼ばれるこの不思議な色合いは鱗粉に対して当たる光の角度で色の見え方が変わるので、シジミの仲間を見つけた時には首を動かしながら色合いの違いを見ることをお勧めします。本当に色の濃さや輝きが変わるので面白いですよ。

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3月中のベニバナアセビに止まるコツバメは、春の妖精といってもいい位にマッチした存在です。この時期の散策ではぜひ見て欲しいですね。

ちなみにコツバメは止まっているときには翅を滅多に開きません。表を見るには捕まえるしかないようですね。

これから始まる春の蝶たちの出現がさらに楽しみになりましたね。次はスギタニルリシジミと言う早春の蝶を狙っていきます。 

ようやく見つけたスギタニルリシジミはこちら↓
aikawa-park.hatenablog.com
冬を越す蝶たちも見られていますよ↓
aikawa-park.hatenablog.com


あいかわ公園の自然に興味の湧いた方は、下のカテゴリーや月別の記事からたくさんの記事を読むことができるのでぜひ御覧ください。
黒い三角形を押すと色々なジャンル別に読めます。昆虫に興味の湧いた方は昆虫の黒三角をクリックすると園内の蝶や甲虫の記事が読めますよ。
また、リンクからはツツジの図鑑や園内で見ることのできる花をまとめた大ボリュームの図鑑も見ることができます。

ハナアブの食事に遭遇 ツツジのおしべに隠された秘密とは?

園内で見かける花には、大型の虫が見られることがあります。ハエやハチなどはよく来ますが、中にはお花に集まるハナアブの仲間たちも紛れているようです。
ゆっくり近づいてみるとどうやら食事をしている様子ですね。
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ちなみにハナアブと言うのはこういう虫です。暖かい季節に花によく止まっているミツバチみたいな虫ですね。
ミツバチだと思っている方も多いと思いますが、アブ独特の大きな目に注目してあげると分かりやすいと思いますよ。

見ての通りツツジの長いめしべに乗っかって何か作業をしているように見えますね。
拡大してみましょう。 虫たちは食事に夢中の場合は意外と逃げたりしません。
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ここまで近づいてみると新しい発見がありますね。何やら大きな黒い口のようなものを利用しています。
拡大して分かったのですが、この子たちは結構器用に足を使っていますね!ほかのおしべに足を上手く絡めてうまく体を固定しています。
いったいここまでしてハナアブたちは何をしているのでしょうか?
その秘密はツツジのおしべにあります。
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このおしべには花粉を飛ばす穴のようなものがあり、入口付近が花粉で覆われています。何か物が当たると花粉はそれにくっついてびよーんと出てくるんですね。写真は指をあてて引っ張り出した後です。
つまり、不思議なことに彼らはこの細長い部分をつっつけば美味しい花粉が食べられると分かったうえでこの作業をしていることになります。

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白いおしべに白の花粉なので見にくいかと思いますが、おしべの先にはしっかりと花粉が付き、ハナアブは口先にそれをくっつけてしきりにもぐもぐしていました。これだけカメラを近づけてもまったく気にしない様子となると、よっぽどおいしいのでしょうか?(笑)
あまり馴染みのない虫ではありますが、じっくり観察したことで少し愛着が湧く時間となりました。 

オタマジャクシがおおきくなってきました。

2月17日ごろに発見したカエルの卵は10日ほどで卵からオタマジャクシのような細長い形になりました。aikawa-park.hatenablog.com
見た目がしっかりとしたオタマジャクシになったのは3月3日で、この時はまだ細かったのですが、3月6日には大分大きなオタマジャクシになっていました。
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このサイズになってくると野外のたんぼや水たまりなどで見かけるサイズになっていますね。私の記憶の中にいるオタマジャクシのサイズはこれくらいです。
田んぼの端っこで泥や石に付いた苔のようなものを食べているイメージです。

彼らはやはり明るい所よりも暗い所の方が好きなようで、基本的には枯葉の下に潜んでいます。
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天敵から身を隠すためか、すぐに身を隠せるところの方が安心できるのでしょうね。

中には好奇心旺盛なのか、ふわりふわりとバケツの中を漂っている子もいます。泡が出ていたのでもしかすると水中ではなく空気中でも呼吸ができるのかもしれません。 もう少し時期が進み、カエルになる手前では肺呼吸になるため、その時には陸地が必要になりますね。
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オタマジャクシのしっぽ部分は体に対してかなり長く、必死で泳いでいると動物のしっぽのようになびき、見ていて飽きません。
このバケツを小突いてみると、一気にわらわらと泳ぎ始めます。小魚が優雅に泳いでいるような印象で、とても綺麗です。
軽い振動などには敏感なのですが、人影などに対する反応はいまいち鈍いようですね。



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食事は水中で溶け始めた枯葉を一緒に入れています。よく食べているようで、写真のように葉っぱにピタリと張り付いて食事をしているようです。子供がアイスの蓋を舐めるように、葉っぱを食べていますね。 今のところエノキの葉が好きなようです。
少しは動物質の物をあげたいので、熱帯用のえさ辺りを探してあげたいですね。

しばらくはこの形で過ごすことになるため、また新しい変化が見られたら記事にしようと思います。

気が付けばコブシの咲く季節

比較的暖かいと感じた今年の冬もいつの間にか3月に入り、そろそろ芽生えの時期を迎えようとしています。

園内では白い大輪の花を咲かせてくれるコブシが咲き始めました。いよいよ春の訪れですね。
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コブシの花は綺麗に咲いているものを探すのがなかなか難しいと感じる花です。その大きさからか、たいてい花弁が写真のようにヘタレてしまっており、いまいち花の魅力を伝えられないようなものになってしまいます。また、白い花なので汚れや傷みが目立ちやすいのも難しい所です。
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こちらは綺麗に開いていた花なのですがやはり重さからか一番上がヘタレていますね。とはいえテーブルクロスのような美しい花びらは一見の価値があります。触れてみると結構ゴワゴワしているんですよね。そして厚みもすごいです。


コブシは園芸用としてもなじみ深い植物となっているので、最近では色々な場所で見れるようになっています。
咲き始めの時期ならではの楽しみ方は膨らみかけた蕾を探すことです。
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ただでさえ大きなモクレン科の蕾がこの時期最高潮に大きくなっているのです。コブシのように大型の樹木である場合、下と上で花の咲くペースが違うので当然花の付き具合とつぼみの膨らみ具合も全然違うんですよね。
蕾の膨らみ具合はよほど植物が好きな人でないと気にしないと思うので、あえて注目してみてください。
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そうすると今まさに咲こうと頑張っている蕾を応援するような気持ちや、おや?意外と花ってねじれて蕾から出てるんだななどの新しい発見をすることができますよ。

早咲きのツツジたちが咲き始めました

あいかわ公園には4万本以上のツツジがあるとされています。3月頃から遅いものであれば6月位までもの長い間色々なツツジが顔を見せてくれるのです。
その先駆けとなるのがゲンカイツツジの仲間たちですね。
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今年植えたばかりのゲンカイツツジ「光源氏」は早くも花の勢いが衰えてきました。ピンクと紫を混ぜたような色でとても綺麗だったのですが、他のツツジたちのような美しいカーテンのように辺りを彩るには数年かかりそうですね。

これから目立つのはやはりシロゲンカイでしょう。
ぽつりぽつりと花が咲き始めています。
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白ゲンカイと言う名の通り真っ白な姿をしています。植物の中には名前にシロやシロバナと付くものがあります。それらはもともとの色とは違った色をしているのです。

この「ゲンカイツツジ」もそうで、ゲンカイツツジのオリジナルは↑の「光源氏」のような色をしています。「光源氏」は色はゲンカイツツジのオリジナルに近いですが、オリジナルは花弁が5枚なんですね。「光源氏」はフリルのようになる八重咲(やえざき)と言う咲き方なのです。これもまた種類が違うわけですね。

種類こそ違いますが、「シロゲンカイ」も「光源氏」もオリジナルのゲンカイツツジがあってこそ生まれた種類なわけです。
サクラやツツジなどはオリジナル(野生にあるもの)とオリジナルを交配したり、オリジナルと園芸種を交配したりするので、それこそ数えきれないほど種類があります。先ほどのように元をたどっていくと、野生に生えていたオリジナルにたどり着くので面白いですよ。
aikawa-park-tutujizukan.hatenablog.jp
あいかわ公園ツツジの図鑑ではクルメ系やキリシマ系などの用語が出てきますが、これも要するに「オリジナルがクルメツツジで、そこから交配された種類である。」「オリジナルがキリシマツツジで、そこから交配された種類である」と言う風にわかるのです。


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文字だけだとなかなかに難しかったかもしれませんが、こういった視点で見てみるのもツツジの楽しみ方の1つです。園芸種なのか野生にあった種類なのかと言うポイントに注目してみてくださいね。
もう1月もしないうちに桜も咲き始めます。サクラと言えばソメイヨシノ、ではソメイヨシノは野生の物でしょうか?それとも交配で生まれたものでしょうか? そうだとすればオリジナルは何になるのでしょうか? こんな視点で、ぜひ植物も見てみてください!