あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

真っ赤な尻尾のようなお花はアカシデ

もはや熱い位の陽気の中、園内を散策していると赤い不思議なお花を発見しました。なんだかどこかで見たことのあるような形の花なのですが見覚えがあるでしょうか?
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空中に動物のしっぽのようなものが浮かんでいます。写真中に写っていることからも木全体で見てみると予想以上の量がありますね。

特徴は赤色で松ぼっくりのようなものが付いているという辺りでしょうか? つい最近そんな花を紹介したような気がしますね。もしかするとこのブログを継続して見て下さっている方はピンときたかもしれません。
aikawa-park.hatenablog.com
3月頭の記事でヤマハンノキと言う植物の花を紹介しました。茶色っぽい花で動物のしっぽのような花を咲かせるという話をしましたね。

名前こそ違いますが花の形はかなり似ています。咲く時期も同じとなると導かれる答えは1つですよね。

ヤマハンノキと今回のアカシデは同じカバノキ科と言う植物の仲間なのです。
サクラの仲間が姿は似ていながらも種類が違うように、このカバノキ科も動物のしっぽのような花をつけるという点では似ているのですね。

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よく見てみるとかなり凸凹していますね。この隙間に花を咲かせるという点も同じです。
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上の方を見てみると花らしくはありませんが、咲いていますね。 近寄ってみないと分かりません。

アカシデは尾状花序(びじょうかじょ)と言うそのまんま尻尾のような形を現した名前なのですが、まさにその通りでいい名前だと思います。

身近な植物で尾状花序になる樹木は良く見つかるので、この形を見つけたからと言ってカバノキの仲間と断定することはできませんが、印象に残る形ではあるのでぜひ探してみてください。

シデの仲間に興味の湧いた方は種の姿を見てみるとさらに理解が深まるかもしれません。
aikawa-park.hatenablog.com


あいかわ公園の自然に興味の湧いた方は、下のカテゴリーや月別の記事からたくさんの記事を読むことができるのでぜひ御覧ください。
黒い三角形を押すと色々なジャンル別に読めます。植物に興味の湧いた方は植物の黒三角をクリックすると園内の花や実の記事が読めますよ。
また、リンクからはツツジの図鑑や園内で見ることのできる花をまとめた大ボリュームの図鑑も見ることができます。

コンクリートそっくりの蛾は、ヒロバトガリエダシャク?

12月~2月にかけてフユシャクと言う冬に現れる蛾を探していました。見られる種類がどんどんと移り変わっていく面白かったのですが、彼らの時期もおしまいです。それと移り変わるように可愛らしい蛾たちが見られるようになりました。
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恐らくヒロバトガリエダシャクではないかと思われる蛾なのですが、この姿は本当の姿ではありません。コンクリートなどの物に擬態するための姿なのではないかと個人的には思っています。

蛾と言えば大きな触角に丸い大きな複眼が特徴的ですが、そういったものが見られませんよね。
この姿をつついてあげると慌てて移動モードに入ります。
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するとかわいらしい姿を見せてくれます。
1枚目ではまるでドクガの仲間かのようなとげとげしい印象を受けていた毛も、この姿になるとぬいぐるみのようなフワフワしたものに見えますね。
蛾の記事では毎回言っているような気がしますが、この絨毯のような質感が癖になるのです。

光によく集まる蛾の仲間はコンクリートやレンガなどの物体につかまっているのをよく見かけます。
細い足でどのようにつかまっているのか気になるところだったので少し拡大して撮ってみました。
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足はやはり細いですが、先端にカブトムシたちと同じようにフック状の部分があることが分かります。人間の肌などにつかまれるのは分かるのですが、これでコンクリートの凸凹にしがみついていると考えるとなかなかにすごいですね。
ロッククライミングしているときのようなギリギリの感じになりそうです。

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この姿が一枚目の触覚を隠しているときと、移動中の姿の変更タイミングです。
この姿で腕立て伏せのような行動をして触角を綺麗に内側にしまい込みます。技を仕込んだ動物を見ているようで感心してしまうのですが、私はこの動作が好きなのでまたつついて起こしてしまうんですよね。
その結果どこかに飛んで行ってしまいました。

ヒロバトガリエダシャクと思われるこの蛾は、一年の内3月と4月の短い期間にだけ現れます。食わず嫌いせずに触れ合ってみると、これまで知らなかった興味を持てるかもしれませんよ。

ベニシジミ 春型

花が賑やかになってきた園内では、それらの花にやってくる蝶たちも賑わいを見せ始めています。コツバメやスギタニルリシジミなどの時期の限られた種類に注目ばかりしていたのですが、長い期間見られる蝶であってもこの季節ならではの楽しみと言うものがあります。
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それが季節による蝶の模様の変化です。春型のベニシジミが出ていることに気が付きました。
恐らく成虫になったばかりと見られ、翅の色合いがめちゃくちゃ綺麗です!

ベニシジミと言えば身近でも普通に見られる種類なので、見かけても見逃してしまうことが多いのです。新成虫が出る時期の春型がこんなにも美しいとは知りませんでした。
ベニシジミは春型と夏型で翅の表側の模様が結構違います。
春型は華やかで、夏型は落ち着いた色と言った感じでしょうか。

石小屋ダムの方面でベニシジミの表翅を撮るために蝶たちを探していました。するとたくさんのベニシジミに遭遇することができましたよ。

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翅が開きそうで開かないもどかしい瞬間です。もうちょっと開いてくれれば嬉しいのですが、こうした半開きのような状況にもよく出くわします。
ベニシジミはそこまで警戒心が高くないのと見つかる機会が多いのでいいタイミングを狙いやすい種類です。
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そしてようやく目的の一枚を撮ることができました! どうでしょうか?身近にいるとはいえなかなか侮れない美しさではないでしょうか?

春型の特徴前翅のオレンジ模様の面積が広い所ですね。これによって止まって翅を広げるととても鮮やかに見えます。

夏型は写真がないのですが、より黒味が強く、前翅の先端にオレンジが出るような色合いになります。落ち着いている色と言う表現が合う色ですね。
春型の方は春らしい爽やかな印象を受けますね。
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別アングルからもう1枚です。ここ最近でもお気に入りの一枚が撮れました。
翅外側の白いラインが額縁のように蝶の輪郭を目立たせてくれていますね。

蝶の仲間は成虫になったばかりが一番美しいです。 時間が経つにつれて雨や敵などにやられてボロボロになってしまうためですね。
もし美しい蝶を見てみたいという方は春の初めのこの時期は美しい蝶を見ることができる絶好のタイミングなので探してみることをお勧めします。
慣れてきたら探したい蝶の出現時期を中心に探してみるのもいいでしょう!
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美しい蝶たちとの出会いにワクワクが止まらなくなるはずです!(写真は春に現れるコツバメ)

まとまって咲く花スミレ その理由は種にあり!

園内が一気に花たちで賑やかになり、見て周り切れないほど色々な花たちが咲いています。
花はまとまって咲くというよりもまばらに見られるくらいのものが多いのですが、冒険の森の入口や園路の端などではとあるスミレたちがパーティを開催していました。f:id:aikawa_park:20210317113633j:plain
去年もこの場所は賑わっていたのですが、今年もまたヒメスミレがパーティを開催していました。会場で席についているかのように皆同じ向きを向いていますね。これは太陽の向きが関係しています。花や葉などは太陽の光がある方向に伸びていくという性質があるので、スミレの仲間は一方向に咲いている光景をよく目にしますね。
こちらはヒメスミレと言う種類なのですが、スミレの中でも最小のスミレです。花は1cm程しかないんですよ。
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ヒメスミレは横から見ても分かりやすいです。花が濃い紫色をしているのに対し、スミレのお尻の部分(距(きょ))は白に近い色をしているのです。
似たものばかりのスミレの仲間の中でもその大きさと色合いから見分けやすいですね。
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スミレの仲間の中には花弁に毛を持つ者もいます。これも種類を見分ける際に役に立つポイントなのです。
時計の針が9時と3時の位置の花びらの付け根を見てみると、真っ白な毛が生えていますね。

冒険の森ではタチツボスミレが同じくパーティを開いていました。
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これまたみんな同じ方向を見ていますね。映画館で座っている人達を遠目から見ているような光景です。
スミレの仲間はその場で弾ける種を持つので、こうしてまとまって生えることも多いんです。1つの種が周囲に散らばり、翌年にはいくつかの花に増え、それがまた種になると次の年にはさらに多くの種が周囲に撒かれていくわけですね。
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ヒメスミレと比べるとより大型のタチツボスミレは、花の形も少し違うことが分かりますね。ヒメスミレはより斜めに咲き、タチツボスミレは縦に大きく咲くようなイメージですね。
楽しそうなスミレたちのパーティに混ざれて、とても春を感じる時間を過ごせましたよ。

早春の黄色い花たち(キブシにアブラチャン)

春に咲花を咲かせるものは黄色の物がとても目につきます。と言うのも変わった形をした花が多いんですよね。
早春の変わった花と言えばキブシは欠かせない花と言えるでしょう。
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失礼ながらこの一枚では全然花に見えませんよね。遠目から見るとキブシの花はブドウのようにしか見えません。もしくは動物のしっぽなんかにも見えるかもしれませんね。風が吹くと風鈴のようにふらふらと揺れます。
ブドウに見える部分全体が花のように見えますが、これは小さな花が集合して1つの大きな花のように見えています。拡大してみてみましょう。
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ここまで拡大してみるとかなり印象も変わるのではないでしょうか? まるで筒のような姿をした1つ1つの小さな花と言うのが分かりますね。 花粉を飛ばすおしべがちらりと顔をみせています。
晴の日に見てみると蝶たちが蜜を吸いにやってきているのが印象的でしたよ。

キブシが生えるような環境では湿った場所が多いのです。そんな場所ではまた違った花の付け方をする黄色い花が見られます。それがアブラチャンですね。
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この花の魅力はこの拡大写真では伝わらないでしょう。単品でもかわいい花ですが、これが凄い数付いているので木全体が真っ黄色の泡におおわれたかのような姿に変わります。園内にはダンコウバイと言う同じ仲間があるのですが、これに関しては花を間近で見ることで見分けられます。
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写真のようにプランと枝のような可愛いものがくっついていればアブラチャンで、枝がなく直接くっついていればダンコウバイです。
こんな些細な違いでも見分けられるのが面白いですよね。
春には黄色い植物がたくさん見られます。興味のある方は 山野草図鑑で黄色の植物を探してみてください。
aikawa-park-sanyasou.hatenablog.jp
図鑑も春の白と黄色をアップデートしています。他の物も更新していくのでお楽しみに。

コブシとモクレン、似た花も並べて比べてみると? その2

先日は大変花付きの良い美しいハクモクレンと言う花を消化しました。今日はそのハクモクレンとコブシと言う同じ仲間の植物を分解して比較していきます。
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2種がこちらです。花の大きさは左のハクモクレンの方が圧倒的に大きいですね。この写真から見た感じですと、他に何か違いが見つかりそうですか?

コブシの方がなんとなくひょろひょろして弱そうな印象を受けますね。
早速この花びらに注目してばらしてみましょう!
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一枚目で花弁の枚数が違うのではないか?と気が付いた方はなかなかに鋭い目を持っていますね。
バラバラにしてみると一目瞭然です。上がコブシで下がハクモクレン。コブシは6枚の花弁を持つのに対し、ハクモクレンは9枚の花弁を持ちます。花びらのサイズ感も2倍くらい違うことが分かりますね。

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写真が小さすぎて伝わらない可能性がありますが、花の咲く向きも実は違います。ハクモクレンは上向きに咲くのが基本なのですが、コブシは横向きに咲くものが多いです。こうした違いが分かると個性が見られて面白いですよね。
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花の中央に位置するおしべとめしべも見比べてみましょう。左がコブシで右がハクモクレンです。やはり花びらが2倍ほどの差があるだけあって、この部分も倍くらい大きさが違いますね。
コブシではめしべがおしべに埋もれているのに対し、ハクモクレンはめしべが圧倒的に大きく伸びています。花の向きなどが関係していたりするのでしょうか。
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コブシのめしべはこんな感じです。小さいですが形はやはりハクモクレンと同じですね。花の香りは2種ともほぼ同じでした。

この2種の花を見てみると、面白いことに付け根の部分に不思議な出っ張りを見つけることができます。f:id:aikawa_park:20210314092633j:plain
丁度このようなものですね。
これは今年新しく伸びる葉と枝です。もうじき開いて伸びてくるはずです。ここから枝を伸ばし、また来年にその頂点に花を咲かせるのですね。

ここまで似た2種類の植物を見比べてみました。最初は同じに見えた2種類が違うものに見えてきたでしょうか? 見たものを頭の中だけで比べてしまうと同じような印象を持って違いが分からなくなりますが、こうして並べてみると結構違うものですよね。

コブシとモクレン、似た花も並べて比べてみると?

温かい陽気とともに一斉に芽や花が芽生え始め、冬の時期と比べるとかなりにぎやかな雰囲気が戻ってきました。
園内では白いコブシが場をにぎわせていますが、石小屋ダムの方面に降りてみるとより鮮やかで大型の白い花を見つけました。
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素晴らしい花付きです。真っ白な花が木の枝を装飾しているような迫力があります。小型の花であれば桜のように木全体をピンクに染めるようなものがありますが、大型の花が多数ついてこんなににぎやかな雰囲気を出すのはあまり見ない気がしますね。
今の季節には庭のある家などでもよく見かけるのですが、これはモクレンと言う植物です。モクレンはシモクレン(紫モクレン)とハクモクレン(白モクレン)があり、これはハクモクレンですね。
花をじっくり見てみましょう。
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この植物ですが、驚いたことに蕾から花開くまでのスピードがかなり速いですね。昼前位に見かけた開きかけの蕾が4時間ほど経った後にはもう写真のように開いていました。
厚みのある白い花びらはかなり大きく、綺麗に重なっていますね。写真からでもこの植物の画用紙のような厚みが伝わるでしょうか?せっかくですから正面からも見てみましょう。これもまた美しいのです。
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外側から各花弁が同じ位置に重なることなく綺麗にばらけて並んでいるのが分かりますね。さながらブーケのような雰囲気で、このまま贈り物に使えてしまいそうです。
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折り重なった花びらの内側では特有の香りを放っていて、人間がにおいを嗅いでもその香りが分かります。
まだ開いたばかりだったので分かりにくいですが、写真のピンクの部分がおしべです。薄い緑色のようなものがめしべで、モクレンの仲間はめしべも複数見られるのが面白い点ですね。
ピンクのおしべは時間とともに広がってめしべを取り囲むかのようになるのも面白い所ですよ。

f:id:aikawa_park:20210314091233j:plain園内で見られるモクレンの仲間には最初に述べたようにコブシと言う種類があります。
見たところ似た仲間同士なので違いが分かりにくそうですが、どう違うのでしょうか?明日は花を分解してこの2種の違いを検証してみましょう。