あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

紫色の細長いお花ムラサキケマンとそれを食べるウスバシロチョウやビロウドツリアブ

暗がりに生える紫色の植物を発見!

植物の中には特定の季節にのみ姿を現す種類がいます。

3月の中旬頃から5月頃にかけて薄暗いちょっと茂みのある場所でムラサキケマンという植物が現れます。

この写真を見て「ああ、道端なんかで見たことのある植物だな」と思った方も多いことでしょう。
散歩をして目を凝らしてあげれば結構至る所に生えていることに気が付くはずです。

この植物は生き物のつながりを見ていくうえでとてもいいサンプルになります。 目に見えない生き物同士のつながりを見ていきましょう。

花の形に注目してみよう

春の植物には細長い形をしたものが多いです。ここに実は不思議が隠されています。

3月~4月頃にかけて日当たりの良い所を歩いていると、空中に止まったかのように静止しているビロードツリアブと言う虫を見ることができます。羽音が非常に高音でぷ~ん↑というハエ音を出すため、知らない人には嫌われがちです。

実際には人には害をなさない虫なので安心してください。よく見るともこもこでとても可愛らしいんですよ。

この虫は1cm程度のとても長い口を持っており、スミレや今回のムラサキケマンなどの長い花から蜜を食べ、花粉の運搬を助ける救世主です。

つまり花は特定の虫に向けて形を変えることで効率よく蜜を与え、虫もまたそれを効率的に食べるために口を進化させてきたという面白い様子なのです。

もこもこの毛は効率よく花粉をつけることができるので運搬役としても最適といえます。

こちらは同じく早春に現れるジロボウエンゴサクというムラサキケマンと同じ科の仲間です。この花を見ればチョウやビロウドツリアブなどの一部の虫しか蜜にありつけなさそうだなというのが分かりやすいですね。

話をムラサキケマンに戻しましょう。

ムラサキケマンの花に注目


咲いた時の花の姿を見せていませんでしたね。

花が咲くとこのように口が下向きで逆立ちした姿になります。
ケシ科の植物のいくつかはこうした面白い形をしており、平地では見られませんが黄色の物や青色の物などユニークな仲間がいます。

見やすいものとしてはこのムラサキケマンがもっとも普通種です。

こうした分かりやすい花を見つけたら、ぜひともその植物が自然の中でどんな生き物と関りを持つのかという点を想像してみましょう。

ムラサキケマンと蝶

このムラサキケマンにはウスバシロチョウと言うアゲハチョウの仲間が付きます。

この蝶は出現が4月下旬~5月中と限られ、かつ食草のムラサキケマンが薄暗い場所に生えることから広場のような開けた環境にはあまり出てきません。
しかも神奈川県ではあまり多い蝶ではありません。

一見するとモンシロチョウなどのシロチョウの仲間に近い印象を受けますが、アゲハチョウの仲間なんですね。翅が透けるほど薄い蝶ということでウスバシロチョウといいます。あいかわ公園ではありがたいことに比較的見かける機会の多い蝶なので、興味があれば5月頃に探してみてくださいね。

ムラサキケマンの変わった性質とは?

再び植物の方面に話は戻ります。

実はムラサキケマンは春を過ぎると姿を消します。春以外の季節は地下の根の姿で過ごすんですね。この点は土壌にとって非常に有益で、土中に根が残り続けることでムラサキケマンを中心としたエリアを良く耕し、水はけの改善などに貢献します。 

土中の根にはいろいろな効果がありますが、特に面白いのは根に共生する菌の保持能力でしょう。植物と共生する菌は根があることで生きていけます。根を抜いてしまうとともに菌もいなくなってしまうわけですね。 逆に土中に根が全くなくても共生菌は生きていけません。 ムラサキケマンは1年中土の中に根を残してくれますから豊かな土壌つくりにも貢献してくれているのでしょうね。 感覚ベースの話ですが彼らの生息する土は非常に柔らかいことが多いんですよ。

道端の草を1つとってもこのようにたくさんのストーリーを覗き見ることができます。花を見つけたら視野を広げて自然全体、生態系という風に幅広い方面から注目して自然観察を楽しんでみてください。