あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

ナツツバキのタネはどれ?

あいかわ公園にはヒメシャラにナツツバキと姿かたちの似た2種類が植えられています。今の季節には変わった形のタネをつけているのですが少し見てみましょう。
aikawa-park.hatenablog.com
ちなみに花については上の記事から見れます。
f:id:aikawa_park:20210117112206j:plain
この見るからに鋭いトゲのようなものがヒメシャラやナツツバキのタネです。

かなりの固さを持っており、悪い角度で踏んだりすると簡単にケガをします。写真はナツツバキの物ですが、ヒメシャラに比べると大きいのと数が少ないので分かります。

先ほど種がこれだと説明しましたが細かく言うと違います。種はこの中に収納されているのです。
f:id:aikawa_park:20210117112445j:plain
この針の山を上手く割ってみます。これはかなり固いので、横向きに踏んであげるのが一番楽ですね。

間違っても縦に踏まないようにしましょう。刺さります。
そして割るとこのような断面をしています。
付け根の部分にくぼみがあるのが見えますか?この部分に種が収まっているのです。
f:id:aikawa_park:20210117112706j:plain
種は殻に比べると非常に小さく、丸っぽい形をしています。この形を利用して風に乗って飛んでいくのですね。
また、収納されているので種の形も少し変わっています。
f:id:aikawa_park:20210117112824j:plain
種自体も少し丸い形をしており、殻にある窪みにすっぽりとはまるようになっているんですね。

よく見るとカットされたスイカのような三日月の形にも見えます。
では実際にどのようにはまっているのかも見てみましょう。
f:id:aikawa_park:20210117113107j:plain
横から見た感じがこれです。上にあいている隙間が大きいので、ポロリと落ちてしまいそうに見えますが、付け根の部分の間隔は狭く、簡単には落ちなさそうなことが分かりますね。乾燥して殻が乾き続けるとだんだんと開いていくのでしょうか?
f:id:aikawa_park:20210117113244j:plain
上から見るととても綺麗な星形をしています。その隙間に種が入っているのが見えますね。

こうしてみてみると、一枚目の横から見た写真と、この上から見た写真では全然雰囲気が違いますね。植物はこのように色々な知恵を使って種を飛ばしたり守ったりしているので、身近な植物にも目を向けて種の違いを楽しんでみてください。

季節外れのフジの実 実に空いた穴は何?

あいかわ公園は山に近い所にあるため、つる性の植物がとてもよくみられます。

中にはかなり立派なつるをしたものもあり、かなり年のいっていそうなものもあります。つる植物でなじみ深い種類と言えば紫色のカーテンのように花を咲かせる藤が有名ですよね。

ところで、フジの実ってどのような姿をしているか見たことはありますか? 花の時期だけで終わってしまうのはもったいないですよ。
f:id:aikawa_park:20210117110927j:plain
と言うわけでフジの実を探してきました。今の季節は乾燥が強いため、多くの実は弾けてしまっています。

運よく形の残っているものを見つけられてほくほく顔です。写真の通りですが、フジの実はかなり大きいです。大人の指先から手首位、もしくはそれ以上あります。
f:id:aikawa_park:20210117111139j:plain
加えて実自体には滑らかな産毛が生えており、動物を撫でているような質感をしています。こんな形の食べ物がスーパーに並んでいますよね。

ぱっと思い浮かびますか? なんとなくソラマメに似ていませんかね。


そうです。フジはマメの仲間なんですね。 食べすぎるとお腹を壊しますが一応食べられるマメが入っています。ボタン電池のような形をした可愛らしいマメです。

では早速この鞘を割って豆とあってみましょう。
しかしその前にこの写真の右上を見てみてください。何か怪しげなものがありますね。
f:id:aikawa_park:20210117111444j:plain
これは嫌な予感がします。

綺麗に形を保った鞘、不思議なことに上中下の3カ所にあいた穴...割ってみましょう。
しかしこれが固いのです。てこの原理のようにしないと割れませんでした。
f:id:aikawa_park:20210117111640j:plain
残念なことに中にあったマメは何者かによって食べられ、空洞と食べかすのみになっていました。残りの部分も見てみます。怒りを込めて踏んづけます。
f:id:aikawa_park:20210117111803j:plain
私が出会うはずだったマメはやはり食べられてしまっていたようです。うんちだけが残っていますね。 

もしかするとこの湿り気によって外の乾燥から弾けずに堪えていたのではないかと思います。
犯人は分かりませんがなかなか鋭い嗅覚を持っている昆虫のようですね。種類を特定してみたいと思います。

昆虫たちの寿命とは? 蜘蛛がいつまで生きるのか探してみよう。

1月に入ってから寒さも本格的なものになってきていますね。毎年これくらいの時期になると寒さに耐えている虫たちを見てガンバレーと応援したくなってしまいます。

あいかわ公園の事務所付近にも1匹の大きなクモが巣を張っていたのを片目で見ていました。
ある朝見てみると巣に姿がなくなっていました。少し下を見てみると。
f:id:aikawa_park:20210117102214j:plain
下にクモがいました。下から見てみるよりも大分大きかったです。大人の人差し指よりも長いくらいの大きさでした。

かなり弱っているもののかろうじて生きているようです。さすがに触ったりする気はしませんが、秋から見ていた個体なので、頑張って生きたなぁと思いました。

私はクモは苦手なのですが、せっかくなので棒を使って調べてみることにしました。
なんやかんやこんなサイズのクモをじっくり見るのは初めてな気がします。
f:id:aikawa_park:20210117102539j:plain
足は思ったよりも鋭いですね。ムカデの足などもそうなのですがかなり先端が鋭くなっています。これで細い糸の上を歩くのだとしたら、サーカスの演者もびっくりの技術ですね。私なら巣から転落しそうです。

更に黒と黄色の警告色があることも知りませんでした。体中黒やら黄色、赤と警告色のようなものだらけですね。 弱っているからか糸を出したりするそぶりはありませんでした。

彼らは今はもう死んでいるとは思いますが、少し前までは外灯の辺りでよく姿を見ることができました。
蛾などの虫がやってくるからですね。
f:id:aikawa_park:20210117103000j:plain
冬と言えばフユシャクの仲間です。こちらも種類の特定まではできないのですが、最近見かけることが多い種類です。

写真で照らし合わせたところ、クロバネフユシャクが近いでしょうか。きっとクモたちはこの辺の虫たちを食べていたのでしょう。夜になると飛んでいるのを見かけます。

面白いことにフユシャクの仲間は種類によって見やすい時期が違う気がしています。もう少しすると羽が横に広いタイプのものが出てくると思います。

フユシャクは冬に出るものの見かけても動かないものが多いです。やはり寒いのでしょうかね。それとも夜行性なので動かないだけでしょうか。

この冬もあいかわ公園の壁は色々な生き物に出会える場所になりそうで楽しみです。

フユシャクの♀探しに挑戦 イチモジフユナミシャクの♀

昨日は樹皮を見ながら小さなフユシャクの♀を探していました。見つけたのはヤママユと思われるものの卵だけでしたね。
f:id:aikawa_park:20210120114321j:plain
よくわからない蛾と思われるものの繭も発見しました。すごい擬態ですね。写真を見ても分からない方がいらっしゃるかもしれません。

蛾などの仲間は繭の時にも敵の鳥に襲われてしまうので、このように色を溶け込ませているんですね。少なくとも人間の目には見つからないくらいの腕があるようです。

しかし、コナラやクヌギなどのブナ科に見られるフユシャクの♀は全然見つかりません。ここは諦めて桜の木を好む種類を探すことにしましょう。
f:id:aikawa_park:20210120114933j:plain
サクラと言えばあいかわ公園ではソメイヨシノです。広場を中心にたくさん植えられていますね。
これを一本一本丁寧に眺めて怪しい虫を見つけ出します。
蛾と聞くと皆様結構顔をしかめがちですが、やはり何か相手を対象に探していると夢中になってしまいますね。予想以上に面白いです。

ところで、実はこの写真にはフユシャクの♀が映っているんですよ。恐らく先ほどの写真を見て気が付いた方はいないのではないかと思います。それくらい木に隠れているんですね。 今回の桜のフユシャクは木の色に擬態はしていません。
f:id:aikawa_park:20210120115257j:plain
実は桜には地衣類(ちいるい)と言う苔のようなものが張り付いています。(実際は菌類の仲間)

フユシャクの♀達はサクラにこの地衣類が張り付くことを知っているのか、それそっくりな姿をしているのです。改めてみてみましょう。f:id:aikawa_park:20210120114933j:plain
分かりましたか? 写真中央に1匹、そして写真右側にもう1匹いますね。
f:id:aikawa_park:20210120115606j:plain
この子達でした! 地衣類に色合いがそっくりですよね。しかし独特な形をしているからか、いれば意外と分かります。大きさは7mm位でしょうかね。

ともあれようやく自力でフユシャクの♀を探し出すことができました。
明確な種類は分からないものの、イチモジフユナミシャクの♀が近い気がします。

この仲間は昆虫学芸員の方によれば交尾中を撮影しないと特定が難しいそうです。♂の姿とあとは交尾器が重要だそうです。蛾は蝶と比べると似た姿をしたものが圧倒的に多いので複雑なんですね。
f:id:aikawa_park:20210120130037j:plain
退化した翅もこう見てみるとマフラーをかけているみたいでなかなかに可愛いですね。昼間でも寒いのか休んでいるのか分かりませんが、あまり動きませんでした。
f:id:aikawa_park:20210120130140j:plain
しかし手にのせてみると事態は一変。君はそんなスピードで走れたの!?と思ってしまうような華麗なステップで指から手首を縦横無尽に走りまわっていました。やはり木と違う違和感を覚えたのでしょうかね(笑)

自力でフユシャクの♀を見つけるミッションに加え、♀の元気に動き回る姿を見れた素晴らしい時間でした。

フユシャクの♀探しに挑戦 見るべきところは人工物?

とても寒い1月でも密かに生きている生き物たちがいます。中でもフユシャクの仲間はこの時期にしか見ることができない種類なのでとても貴重です。フユシャクの仲間は♀にとても変わった特徴が見られましたね。
aikawa-park.hatenablog.com
画像の物は♂です。

上の記事では偶然にもフユシャクの♀を発見することができたのですが、彼らを探すつもりで見つけたことは実は一度もありません。そこで今回はフユシャクの♀を狙って見つけ出すことにしました。
昆虫学芸員の方からのアドバイスをいただき、好む場所を教えてもらいました。
f:id:aikawa_park:20210120113316j:plain
意外なのですが、このような人工的に作られた場所の上でも見られるそうです。フユシャクの♀は翅を持たないので飛べません。そこでこのような場所で待機しているという感じでしょうかね。

柵の上をどんどんみていきます。フユシャクの♀は1cm程の大きさで、ものによってはそれよりも小さいです。ですから見逃しに注意が必要ですね。
f:id:aikawa_park:20210120113526j:plain
こういった場所を止まり木として利用するのか、鳥のフンが目立ちます。サイズがいい感じにフユシャクと似ていますので、遠目だと「お?」となるので困りますね。

残念ながらここでは見つかりませんでした。降りて広場でブナ系とサクラを見ていくことにします。

探し方ですが、先ほどの通り彼らには翅がないため木の上にはなかなかいません。隠れ家となるような木の隙間を探していくことになります。
f:id:aikawa_park:20210120113912j:plain
こういったポイントですね。色味が木にそっくりなので思っている以上に丁寧に見て行かないとまず見つからないと思います。

木の幹をじっくりと見て回る経験はあまりないのですが、よく見ると色々とくっついているものですね。
f:id:aikawa_park:20210120114014j:plain
コナラの木には夏場に見つけた大型の蛾、ヤママユの卵と思われるものが付いていました。何カ所かで見かけてはいるのですが見つけるとやはりうれしいものですね。
明日も木をじっくり見ながらフユシャクを探していきます。

翅を広げるムラサキシジミ 彼らの行動の秘密とは?

南山を北駐車場の方から登った帰り道では、カロリー摂取アイテムを所持していなかったので足が疲れてしまいました。

降りる頃にはテンションが落ちていたのですが、日が上がって暖かくなったからか目の前をムラサキシジミが通ったのです。なんやかんや久々に見ました。こういった偶然の遭遇がたまりませんね。
f:id:aikawa_park:20210113140416j:plain
どこにいるか探すクイズのような距離感なのですが、彼らはとても敏感なのです。逃げられた時のために遠くからパシャパシャ取りつつ近づいていく作戦です。

見ての通りこのように日向で翅を広げて体温をあげます。シジミチョウの仲間はこうした行動をとっているのをよく見ますね。

警戒されると翅を閉じます。ムラサキシジミの日向ぼっこ撮影は全敗中なので、期待してしまいますね! 

この瞬間は荒野で拳銃の早打ちをする決闘のような反射神経が求められます。すなわちシジミチョウが翅を閉じる動きをした瞬間に近づけていた手を蝶を刺激しない速度で離すのです。f:id:aikawa_park:20210113140708j:plain
一枚目と比べれば大分開いています。しかし、これは恐らく警戒されています。これだけでもとても綺麗ですよね。しかし完全リラックスしているときの姿を収めたくなります。もう少し粘りましょう。慎重に慎重に...
f:id:aikawa_park:20210113141148j:plain
おおぉ!翅を広げたムラサキシジミにこんなに近づけるとはとても嬉しいです。

翅の開き方を前の写真と見比べてみてくださいね。こちらはがっしり広げています。こちらの写真の方が前翅の青感が強調されていますね。

私のコンパクトデジタルカメラでは色の魅力は映しきれませんがこの感動が伝えられたらと思います。 
しかしながらこの体験を通じて蝶の写真を撮る方が何枚も写真を撮る気持ちが分かった気がします。光のアングルによって色の見え方が全然違うんですね。
f:id:aikawa_park:20210113141752j:plain
f:id:aikawa_park:20210113141640j:plain
同じ蝶で同じ距離なのですが上は少しくすんで見えます。
下は色がかなりはっきりと見えますね。蝶がいてくれる限りベストアングルを模索してしまいそうな危険を感じました。素晴らしい生き物です。

最終的にはこのムラサキシジミも心を許してくれたのか手に乗り移る位まで親しくなりました。さすがに手の上での日向ぼっこは撮れませんでしたが、指の上でも日向ぼっこはしてくれました。
f:id:aikawa_park:20210113142054j:plain
3枚それぞれ色合いが全く違うのでそれぞれ比較してみてください。 私が一番好きなのは最後から2枚目の写真ですね。今回のおかげでシジミチョウの時期がやってくるのがますます待ち遠しくなりました
シジミチョウの色の魅力が少しでも伝わると嬉しいですね。

あいかわ公園の自然に興味の湧いた方は、下のカテゴリーや月別の記事からたくさんの記事を読むことができるのでぜひ御覧ください。
黒い三角形を押すと色々なジャンル別に読めます。蝶に興味の湧いた方は昆虫の黒三角をクリックすると園内の蝶や蛾の記事が読めますよ。
虫取りお役立ち情報では園内で私が捕まえた虫たちの捕まえ方を難易度別に紹介しています。今後捕まえたい虫の参考などに利用してみてはいかがでしょうか?どんな虫がいるかもわかりますよ。
また、リンクからはツツジの図鑑や園内で見ることのできる花をまとめた大ボリュームの図鑑も見ることができます。

南山北駐車場ルートの自然 その6

いよいよ松が見えてきたということで標高も上がってきました。
そこそこ目立つのは林環境であれば良く見つかる赤い実をつける植物です。
f:id:aikawa_park:20210113134351j:plain
これはヤブコウジと言う植物ですね。その1で出てきたマンリョウの仲間で、この仲間はマンリョウ、センリョウ、ヒャクリョウ、ジュウリョウなどと呼ばれます。豪華さと関連があります。
f:id:aikawa_park:20210113114639j:plain
こちらがマンリョウ(万両)なのですが、先ほどのヤブコウジはいったい何両だと思いますか? 豪華さはどうでしょうか?



答えは十両ですね。この細々とした感じが魅力だと思います。目立つ色はあればあるほどいいというわけではありません。洋服の差し色のようなものです。
この先で以前の送電線?に合流しました。
aikawa-park.hatenablog.com
ここですね。
なのでこちらの記事のルートで降りることにしました。
f:id:aikawa_park:20210113135209j:plain
前回は気が付かなかったのですが、かなりキクイムシにやられているミズナラ?かコナラがありました。もともと枯れ気味の大木に入ったようです。正直2度見してしまうくらいのやられ具合で、今までの木よりもずっとひどいです。恐らくもう枯れてますね。 自然のつながりで考えるとこういった木に前回見つけたキクラゲやシイタケなどのキノコが生えることで木を分解し、また地面に帰っていきます。
そしていいタイミングなので上の記事(その4)の1つ前に疑問だったコナラかミズナラの葉にもケリをつけてきました。
f:id:aikawa_park:20210113135539j:plain
コナラとミズナラはお友達同士なので葉が似ているのですが、ミズナラは葉の付け根の棒状の部分(ようへい)が短いという特徴があります。樹皮もコナラより白くごわついており、剥がれていたりするものもあります。
f:id:aikawa_park:20210113135808j:plain
これはミズナラですね。それと同時に園内で見つかるミズナラの枯葉の不思議も解けました。山を下りる風に乗ってこんな上から飛んできたんですね。
ミズナラは高い標高を好むので山の上の方でないと見られないのです。
なかなかに立派なミズナラがあったので、キクイムシ被害にあわずに過ごしてほしいです。
山のこの状況を見ていると、今年の夏はキクイムシの影響で甲虫がたくさんでてくる予感がしますね。