あいかわ公園自然観察ガイド

嫌われがちな毛虫から大人気のクワガタたち、更には季節の植物まで。たくさんのあいかわ公園の自然を紹介していきます。ネタを見つけたら更新中。画像の無断転載は禁止です。

ヒトリシズカのかわいい花と、林床の生き物たち

本格的な春を迎え、園内の落ち葉があるような所では人間が近づくとかさかさと言う音が鳴ります。パッと目では見えませんが、落ち葉の下や隙間をたくさんの生き物が動いているんですね。
だいたい小さい生き物たちなのですが、中には大きな生き物もいるようです。
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地面から高く飛びあがってこちらを驚かせてきたのは大きなバッタです。成虫で冬を越す珍しいバッタなので春の今の時期であっても大きな成虫を見ることができるんですね。フォルムはトノサマバッタに似ているように思うかもしれません。しかしツチイナゴと言う名前のバッタです。
冬は多くの植物が枯れているのでそれに合わせて茶色の姿なんですね。
まだ寒いのか動きは鈍いようでした。

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あれほど大きなバッタならまだしも小さなバッタたちにとって脅威となるのはニホントカゲなどの天敵ですね。
日当たりのよい所では割と高い確率でニホントカゲが見つかります。最近は園内1週すると3匹は見かけますね。
彼らもまだ動きは鈍いですが、たくさん日向ぼっこをした後の子は元気よく逃げていきます。
写真の子は眠そうですがやはりこちらの事をなんとなく警戒していたようで、カメラの影がかかったとたん逃げていきました。

植物の方では林床にも春らしさが見えますよ。
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春らしい優しい雰囲気のお花 ヒトリシズカが咲いていました。あまり主張のない白い花が控えめで好きなんですよね。この時期になるとついついありそうな場所を目で探してしまいます。
大きな4枚の葉が花を抱えるように付いており、作られたかのような綺麗な葉の形をしています。
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花らしくない花をしていますが、この白いひも状の部分がおしべであり、少し見えにくいですが付け根には花粉が含まれている葯が付いています。
この時期にのみ見られるかわいい花なので、興味のある方は見てみてください。
やはり春になると植物も虫も賑わってきて最高ですね! 毎日発見があります。

お花とミツバチ

花の斜面ではツツジが賑わいを見せています。園内を歩きながらツツジを眺めていると驚くほど大きなブーンと言う羽音が左右両方から聞こえるかと思います。
この羽音の正体は誰なのでしょうか?
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音を見つけたらその音の方向を探してみましょう!
どうやらその正体は可愛らしいミツバチだったようです。羽音が凄いだけにそこら中にミツバチが飛んでいます。
蜂と聞くと怖い印象を受けるかもしれませんが、ミツバチに関してはこちらから攻撃をかけない限り大丈夫です。ミツバチは一度差すと自身も死んでしまうため、命の危機でない限り刺しません。アシナガバチやスズメバチとはその点で違いますね。ミツバチはとても穏やかな子達です。
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ミツバチは夢中になりながら花の奥にある蜜を舐めています。こちらはサクラの花ですが、一枚目の写真と同様に花の根元を目指しているのが分かりますね。足の方を見てみるとこれまた可愛らしいお団子のようなものができています。これはいったい何でしょうか?


実はこちらは花粉がまとまってできたお団子なのです。彼らの足は小さな毛で覆われており、そこに水分と花粉を合わせて団子を作るのですね。
花粉団子は彼らの食料として利用され、蜜と並んで大切なご飯なんですね。
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こう見るとかなり効率よく食事を確保していることが分かります。
1つの花が今日の分の食事でもあり、後々の食事にもなると考えると、我々でいうカレーの作り置きみたいなものでしょうか?
そう考えると食事の手間がかなり省けていいですよね。

せっせと食事を集めるミツバチたちは次々と花を移動します。ですから彼らは自然界だけで受粉を助けるだけでなく、農作物などの我々の生活にも欠かせない存在なのです。甘くておいしいはちみつはもちろん、市場に出回る果物類や野菜などを見かけたら、もしかしたらあのミツバチたちが手助けしてくれてできたものなのかな?と考えてみると、きっと彼らに対する意識が優しいものになると思いますよ。

ピンク色のゾウムシ? モモチョッキリ

昼間は初夏とも思えるような温かさで、虫たちもなんだかうれしそうに見えるこの頃です。

園内ではパークセンター前にカリンと言うバラ科の植物が植えてあるのですが、今その花が咲いています。
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秋ごろに大きな丸い実をつける植物なのですが、花は4月頃に咲くんですね。

花の位置が高いので毛虫などに気をつけつつ枝を持って下げてみると、変な虫を発見しました。
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この自然観察ガイドのブログでは初めての登場からも知れませんが、首が長いオトシブミの仲間の1種のモモチョッキリではないかと思われます。

先ほどカリンがバラ科だという話をしましたが、モモチョッキリはバラ科に付く虫なんですね。

ナシなどの害虫とされており、果実の付いた枝をチョッキリと切り落としてしまいます。

色合いが地味に綺麗なのが素敵ポイントですね。
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体に対する首の長さがとても長いですよね。

体の3分の1ほどがになっています。

これを人間で想像してみるとどうでしょうか?

妖怪のろくろ首には勝てませんがなかなかホラーな印象の人間になってしまいますね。

そして手にのせて気が付いたのですが、彼らの足は吸盤のようになっっているようで、ぺたりと張り付いたようなひんやりした感じがあります。

カミキリムシの足に似ているので、細かな毛が生えているのかもしれませんね。
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さすがに手にのせていると違和感があるのか、落ち着かない様子で歩き回っていました。

急いでいるとやはり手から転げ落ちてしまうのですが、似た仲間のゾウムシに見られる死んだふりを行うことも確認しました。

20秒ほどしか死んだふりをしていなかったので、忍耐力は弱そうですね。(ゾウムシは40分ほど死んだふりをした個体を見たことがあります。)

思わぬ出会いに驚きましたが、身近な普段見ないところでもその植物を利用している生き物がいることが分かり、自然のつながりを感じましたね。

同じゾウムシの仲間たちはこちら↓
aikawa-park.hatenablog.com
aikawa-park.hatenablog.com

飛び出してきたルリタテハ

花の斜面を歩いていた時のことです。園内でわずかながら発見されているトラフシジミと言う蝶を探していたのですが、難航しています。
探しつつ歩いていると大型の蝶が飛び出してきました。その正体はいったい?

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そこには大けがをしたルリタテハがいました。飛び出してきたときには綺麗な個体かと思ったのですが、これはまた厳しい冬を超えた越冬個体のようですね。敵との戦いに勝ち、生き延びた貫禄のようなものを感じます。
ルリタテハは個人的に接近するのが難しい蝶の1種で、この春には4度ほど見かけていますがどれも近づけませんでした。この距離でも初めての距離です。青い宝石のようでとても綺麗ですよね。
蝶に近づこうとする場合にはスロー映像のようにとにかくゆっくりと動くことが大事です。蝶が自分の影に入ってしまったり、カメラを近づける手が速すぎると飛ばれる印象があります。 f:id:aikawa_park:20210403132408j:plain
そんなこんなで目先15cm位までは近づくことができました。ルリタテハの美しさはどうでしょうか?
春に見られる蝶たちの中でも身近な割にかなり綺麗だと思いますよ。
写真では蝶の輝きを映しきれないのが残念ですね

ルリタテハは冬を越す蝶です。つい最近紹介したヒオドシチョウと同じ仲間であり、色は違えども姿などは似ています。特に羽を閉じているときには2種とも枯葉にそっくりなのでなかなか見つかりませんね。
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落葉の上にいたら分からなさそうではありませんか?

嬉しいことに園内では1日に数回見かけることもある頻度で見つかっています。虫取りと言えば夏がやはり強いですが、今の季節でも十分楽しむことができるんですね。むしろ夏にしか虫取りをしていない方は春の虫を知らずに損をしているかもしれません。
少し運動するがてら蝶を探してみるのもいい体験になると思いますよ。

虫取りをする場合ブログ記事にあるカテゴリから虫取りお役立ち情報をご覧ください。
パークセンターが利用できないので、一部の情報が利用できない状態になっていますが、虫を捕まえるための情報をたくさんそろえています。
aikawa-park.hatenablog.com
このカテゴリーではその虫を捕まえた実績のある場所なども紹介しているので虫取りをするうえでとてもおススメですよ。

綺麗な花には毒がある? 白くて丸い有毒植物 ミヤマシキミ

南山に作業をしに行った時のことです。 さすがに気温も上がり、ヤマビルが出始めました。
山に登られる方は注意が必要です。

ヒルのシーズンになるとついつい足元に目が行きがちです。そうすると普段は素通りしてしまうような場所でも自然と足元に目が行くようになります。
南山の足元ではとあるお花が豪勢に咲いていましたよ。
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これはミヤマシキミorツルシキミですね。 春に咲くミカン科の植物で、豪勢に花を咲かせるものですから虫たちにはいい餌場のようです。
花がもこもことしていてとてもかわいらしいですよね。写真で既にお分かりかと思いますが、この丸全てで1つの花ではなく、小さな花が1つづつ集まって大きな花のように見えています。f:id:aikawa_park:20210403112819j:plain
花を拡大してみてみましょう。黄色いトイレ掃除用のブラシみたいなものがくっついているのが分かりますね。これは花粉を蓄えておく葯(やく)と言う部分です。付き方によって種類の見分けに役立ったりしますが、花の内側を向くものが多いですね。
改めてみてみると4枚の白い花びらを持ち、4つのおしべを持つことが分かります。これは遠くから見ただけでは分かりませんね。
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シキミの仲間はミカンの仲間なのですが、葉にも特徴が見られます。
写真に写る葉からどのような印象を受けるでしょうか?


かなり厚みのある葉を持っていることが分かりますね。触れてみると画用紙のような固さがあります。葉をちぎるとミカンのような香りが分かります。この香りはいったいどこから来るのでしょうか?
ここで葉も拡大してみてみましょう。
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するとぶつぶつとしたものがあることが分かります。これは腺点(せんてん)と呼ばれ、シソなど香りが強い植物に見られるものです。香りの成分が含まれており、ここからいい匂い(人によっては不快)がします。
このぶつぶつは種類を絞り込むときにとても役に立つポイントなので、ぜひ身近な植物の葉でも確かめてみてください。とはいえ植物の中には触れるとかぶれてしまう種類もあるため、気を付ける必要はありますね。
実はシキミの仲間も有毒な植物です。香りがいいからと口にしてはいけない植物なんですね。 

ヒオドシチョウと日向ぼっこ

春の蝶を探して園内を歩いていると、嬉しいことに多数の蝶に遭遇出来ます。
出会う蝶には性格があると感じており、人の気配に敏感なのは枯葉にそっくりなタテハチョウの仲間に多い印象です。
中でもヒオドシチョウは出会えても近づけない蝶の筆頭でした。
しかし、チャンス到来です!
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日向ぼっこをしているヒオドシチョウに遭遇しました。見かけた機会は2桁に近いですが、ここまで近づけたのは初めてです。
枯れた芝生に突き刺さっている葉っぱのような姿をしていますね。越冬する蝶らしい姿と言えます。
蝶は翅を広げて日向ぼっこをするので、少し待ってみましょう。
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開きました!
ヒオドシチョウはやはりオレンジ色の面積が広くて美しいですね~! こう見えてかなり大きめの蝶で、飛んでいるとバサバサと言う音が聞こえます。シジミチョウやモンシロチョウなど、普段馴染みのある蝶たちでは見られない特徴でしょうね
体には毛がたくさん生えています。これが日の当たり方によって緑色に輝いて見えるのがまたいいんですよね。
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厳しい冬を乗り越えたであろう証拠として翅はボロボロですが、これが逆に渋さを出していると思うんですよね。ヒオドシチョウに関しては色が褪せていても独特の味がかなり出ているように感じます。若々しさと言うよりも年季が入った良さと言いますか。
この蝶はかなり大人らしく、堂々としている気配を感じました。 指を差し出すとそれに乗ってくる有様です。可愛いですね。
そしてツツジの花に飛んで行ってしまいました。ありがたいことに目の前のツツジに止まってくれたのです。
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美しいツツジに美しい蝶と、まさに春らしい写真を撮ることができました。こういったシチュエーションと言うのはなかなか狙って作り出せないのでとても嬉しいですね。
人の気配に敏感な蝶で、これまでは馴染みが無かったヒオドシチョウでしたが、じっくりとその姿を眺められる時間となりました。
花に蝶の組み合わせはやはり合いますね!

園内の自然を楽しみたい方にはこちらの図鑑もおススメです。
aikawa-park-tutujizukan.hatenablog.jp
aikawa-park-sanyasou.hatenablog.jp

タネツケバナとコンロンソウの違いとは?

昨年の春に見ていなかったエリアの植物を見てきました。
やはり見られるものは園内で頻繁に見かけるいつものメンバーになってしまうのですが、1種類だけ園内では見たことのない種類を発見しました。
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この花なのですが、上に2枚下に2枚と計4枚の花弁を持ち、種は細長い棒状と言うことでアブラナ科の植物だということが分かります。
アブラナ科の植物と言えば食用油の原料であり、菜の花として食卓にも並ぶセイヨウアブラナ
それからカラシナも春には有名ですよね。
園内ではタネツケバナの仲間がよく見られ、この手の花を見つけたらまずそれらを疑います。
参考までにミチタネツケバナを見てみましょう。
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ちょっと花の開き具合が悪いですが、似ている種類なんですね。
違いの大きい葉を見比べてみましょう!
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こちらが今回新しく見つけたアブラナ科の仲間です。特徴としては葉にかなり丸みがあり、縁に付くギザギザもはっきりと見て取れるという所でしょうか。あとは葉の大きさが同じ仲間たちと比べるとかなり大きめです。
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ミチタネツケバナの場合こんな感じです。葉は丸いですがギザギザはないのが分かりますね。
より大型の物にタネツケバナがあるのですが、この雰囲気をより大きくした感じなのでタネツケバナの仲間ではないと思われます。
すると、このような雨後に水が流れ、沢的な環境を好むものとしてはコンロンソウの仲間が候補に挙がってきました。コンロンソウは馴染みのない名前だと思いますが、山の中の水気の有るような場所に春に訪れるとこの仲間が緑と白の美しい景色を作り出している所に遭遇することがあります。
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葉の丸みから恐らくマルバコンロンソウでしょうね! 干上がる沢沿いとは言え、春の沢沿いに生える植物が身近に生えているとは思いませんでした。
良いものを発見できたのではないかと思います。