冬芽を楽しむ時期
冬芽(ふゆめ、とうが)を観察してみるのもこの季節ならではの自然の楽しみ方です。
冬芽にはいくつかのタイプがあります。 実際に木の先についている目を見てみましょう。
分かりやすいのは鱗芽(りんが)と裸芽(らが)の違いですね。
分かりやすい鱗芽を見てみましょう。
基本の鱗芽と芽の付き方
写真は甲虫の木ことコナラの芽です。
三角コーンのような可愛らしい形に目が行きますが、さらに細かい所にも目を向けてみましょう。
このコーンをじっくりと見てみてくださいね。すると何やら出てきたばかりのタケノコのように皮が付いているのが分かるかと思います。
固い葉のようなものが何層にも重なり合っており、来年の芽を寒さから守っています。
鱗芽は写真のように非常にわかりやすいです。ついている数なども分かりやすいですし、色や形ももちろん判別に役立ちます。
クヌギをベースに何種類かの芽を比較してみましょう。
こちらは同じドングリの仲間であるシラカシですね。
ドングリの仲間同士なだけあって、冬芽の雰囲気はとても似ています。しかし、色については緑色~黄緑色の物が多く、色の違いで分かりやすいですね。まあその前にシラカシは冬に葉を落とさない常緑樹なので分かってしまいます。
仲良く並んだカエデの仲間の芽です。
色はコナラにそっくりですが明確な違いがあります。それが冬芽の付き方です。
コナラは先端には複数個の芽をつけますが、それ以外の枝の途中では右左右左と芽をつけます。これはコナラの葉が互生(ごせい(右左と交互に葉が付く))というつき方のためです。
カエデは左右両方に葉を広げる対生(たいせい)なので冬芽の時点で仲良く左右同時にくっついているんですね。
対生と互生が分かるだけで種類を絞り込むのに大きく役立ちますから、注目してみてください。
より大型の冬芽
これまでと比べると大きめなのがイヌシデの冬芽です。
鱗の雰囲気もごつごつしていてかっこいいですね。この植物はコナラやクヌギと並んで雑木林で見られやすい種類なので、実は身近で観察しやすい種類です。
続いては一風変わった姿のこちら。トチノキというトチ餅でおなじみの植物です。 この冬芽は親指程度の巨大な芽で、かつりんご飴のように粘り気のある液でコーティングされています。やはり寒さから芽を守るための仕組みでこの粘度が寒さや害虫などから芽を守ってくれるのです。
冬芽と虫こぶ
最後に植物に寄生する生き物の不思議を見ておきましょう。
先ほど紹介したシデの仲間の冬芽に寄生し、爆弾のように膨らませるアカシデメムレマツカサフシという虫の仕業です。極小のダニ類がアカシデの芽に寄生します。
虫こぶは言葉だけでは馴染みがないかもしれませんが、我々も実は黒の色素を抽出するためにタンニンが豊富な虫こぶを利用していたのです。
鉄漿(おはぐろ)にはヌルデという木の虫こぶから取れたタンニンを利用したという話がありますよね。
ちなみに虫こぶの原因たちは葉や芽などいろいろなところに寄生します。園内でよくみられるものにはクヌギエダイガフシがあります。
クヌギの芽に寄生し、特有の泡状のきりたんぽを作ります。この中には円形に肥大した芽があり、その中でとある生き物が育ちます。
アカシデメムレマツカサフシはダニでしたよね。これは何が育つと思いますか?
実は植物寄生性のハチなんです。驚きですよね。残念ながら生態写真はありません。
虫こぶは非常にユニークで、虫と植物のつながりを見るにはうってつけの対象です。面白い形に注目してもよし、虫こぶを探すもよし! 興味のある人は身近な木の先に注目してみましょう。